妄想小説
□恋愛中毒I
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チエはまだ誰もいないリハーサル室で、一人、黙々とストレッチをしていた。
イメージトレーニングは完璧。
後は相手と合わせるだけ。
――昨夜のあのタイミングでの告白は…さすがにまずかっただろうか…。
――いや、あのタイミングでなければ、この先いくら待っても言えなかったかもしれない…。
そんな堂々巡りをしながら、さっきから鏡を睨むようにアップを続けている。
(あの後、ちゃんと眠れたんやろか…)
電話とは言え、トウコは初めて自分の口から真実らしきものをチエに告げた。
それが嬉しくもあり、少し切なくも思う。
知りたい事と、知らない方が良かった事とは、本当に紙一重だとチエは思う。
自分が聞いてしまったせいで、トウコに負担を掛けるような事になったりはしないだろうか…。
「おうチエ、早いなぁ!」
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