拍手文庫
□初カップル。いいのか、それで…。
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『もしもし?…お疲れ〜』
「うん、お疲れさん」
ようやくバウ公演も千秋楽を迎えた。
打ち上げで軽く飲んで、これから電話をかけようと思っていた絶妙のタイミングでの着信。
自然と頬が緩む。
『どうだった?そっち』
「あ〜まあね、いろいろあったけど、取り敢えず」
『そっかあ…あれからまた良くなったんだろうね』
「そうだといいけど。そっちは?」
公演を観に来てくれたのは、まだツアーが始まる前だったから。
今日は確か移動日なはず。
『ホテルに着いたとこ。ご飯も食べたよ』
「そっか、お疲れ。」
『ねぇねぇみこちゃん、今日開演前にチエさん電話してなかった?』
あかしの笑いを含んだ声が受話器を通して聞こえる。
もう眠いのだろうか…。
いつもより少し、ゆったりとした喋り口調。
芯の無い、ぼんやりとした声。
「…う〜ん……あ、してたかも!」
なんで電話越しにチエさんの話をしなければならないのか…。
少し面白くないと思いつつも、私は今日の朝の様子を思い出していた。
――『はい……はい…。え?ちゃいますよー…そんなん……あ、いえ。ほぇ〜…うん、うん…。へへへ……』
今朝、さすがに緊張の面持ちで登場したカンパニーのトップ様は、開演前に何やら電話をしていた。
相手は誰か、などと言うのは愚問ですらない程の、それはそれは緩んだ顔で。
今朝の緊張感はいったいどこへ消えたんだ?と、思わず突っ込みたくなる程の変貌ぶり。
「……ん?なんであかしがそんなん気になるん…?」
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