拍手文庫
□いよいよ全ツ&バウ
1ページ/3ページ
「トウコさ〜ん、アレ、知りませ〜ん?」
「…アレってなんやねん」
明日、チエは東京へ向かう。
今日の稽古が終わって、ただ今荷造りの真っ最中。
トウコはソファーで優雅にコーヒータイム。
「アレですよ、アレ!」
バスルームの方からバタバタとリビングに入って来たチエは、片手に携帯歯ブラシ、片手にタオル類を持って仁王立ちになった。
「知らんやん。」
「ええ〜?おっかしいなぁ〜…」
見るともなく点けっぱなしになっていたテレビに視線を向けたまま、トウコはコーヒーを啜った。
「…乾燥機ん中、見た?」
「あっ!!」
バッグの中に手に持っていた物を放り込むと、チエはまたバスルームに逆戻り。
何かに気付いたらしい。
「さっすがトウコさん!何にも言ってないのに、ウチが探してたヤツ、よくわかりましたね!!」
何が嬉しいのか、乾燥機から取り出して来たソレを誇らしげに広げ、チエはトウコにとびきりの笑顔を見せた。
それはいつか、トウコからチエにプレゼントしたTシャツ。
黒地にスマイルくんがデカデカとプリントされたふざけた代物。
「…なんや、それ探してたんか。」
「はい!絶対持って行くって決めてたんで!!」
キラキラと瞳を輝かせながらTシャツを畳むと、それをバッグに納める。
「…稽古着なんか、なんでもええやんか」
「そうはいきません!」
.