拍手文庫
□真のライバル
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(…ライバル……なんだと思う……)
『お風呂、頂きました〜』
トウコさんの部屋でシャワーを借りたウチがリビングに入って行くと、二組のつぶらな瞳が出迎えてくれる。
『おう。じゃあたしも入ろーっと…。ほら、ちょっと降り〜』
トウコさんの膝を占領している二匹は、そんなトウコさんの言葉は完全に無視。
…あの目は絶対に睨んでる、と思う。
『聞こえんの〜?お風呂に入るんやからねぇ〜?』
そしてトウコさんは、そんな二匹の頭と背中を撫でて、蕩けそうな笑顔。
二匹は満足気に目を細めたけど、ウチから視線を外さない。
ウチは知ってる。
猫が尻尾を振るのは、警戒信号を発している時。
若しくは、相手を威嚇する時。
…喧嘩売ってんのか…?
しばし睨み合いが続く。
トウコさんがとても可愛がっているシルバとローズ。
どれほど大切にしているのかは、その愛おしそうな瞳を見れば分かるってなもんで。
そして動物とは、直感力に優れている。
だから多分、ご主人様に恋しているウチを、あのコ達は本能で知っている。
『ほらぁ〜いつもこんな我が儘せぇへんやろ〜?』
テコでも膝から降りないつもりらしい。
…んにゃろぅ。
『はいはい、ご主人様はお風呂の時間ですよー』
そう言って二匹を促し、トウコさんの手を取り立ち上がらせる。
膝から転げ落ちるみたいにして降りた二匹は、明らかに不満気。
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