拍手文庫

□真のライバル
1ページ/3ページ







(…ライバル……なんだと思う……)




『お風呂、頂きました〜』


トウコさんの部屋でシャワーを借りたウチがリビングに入って行くと、二組のつぶらな瞳が出迎えてくれる。


『おう。じゃあたしも入ろーっと…。ほら、ちょっと降り〜』


トウコさんの膝を占領している二匹は、そんなトウコさんの言葉は完全に無視。
…あの目は絶対に睨んでる、と思う。


『聞こえんの〜?お風呂に入るんやからねぇ〜?』


そしてトウコさんは、そんな二匹の頭と背中を撫でて、蕩けそうな笑顔。
二匹は満足気に目を細めたけど、ウチから視線を外さない。




ウチは知ってる。
猫が尻尾を振るのは、警戒信号を発している時。
若しくは、相手を威嚇する時。


…喧嘩売ってんのか…?


しばし睨み合いが続く。



トウコさんがとても可愛がっているシルバとローズ。
どれほど大切にしているのかは、その愛おしそうな瞳を見れば分かるってなもんで。

そして動物とは、直感力に優れている。
だから多分、ご主人様に恋しているウチを、あのコ達は本能で知っている。



『ほらぁ〜いつもこんな我が儘せぇへんやろ〜?』



テコでも膝から降りないつもりらしい。

…んにゃろぅ。



『はいはい、ご主人様はお風呂の時間ですよー』



そう言って二匹を促し、トウコさんの手を取り立ち上がらせる。

膝から転げ落ちるみたいにして降りた二匹は、明らかに不満気。






次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ