拍手文庫

□連日猛暑が続いています…
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『ちょっと!トウコさんッ!!』


終演後、羽根を下ろす為に衣装部にいるところに、チエが血相を変えて飛び込んで来た。


『お疲れ。なに?』

『なに?やあらへん!!』(動揺の余りタメ口)

『ぎゃーぎゃー騒ぐなや…うっさいなぁ〜…』


今日は二回公演だったし、トウコの会の総見もあったので、いつも以上に気合いが入っていたのは知っている。
そのお陰で、お疲れモード全開なのも。


『今日のアレは何なんですかっ!?』

『アレ?』

『「おかえりなさいませ、ご主人様♪」ですよっ!』

『ああ…。なに?なんか問題でもあった?』


話ながら羽根を下ろしたトウコは、スタッフに礼をするとそのまま部屋を出る。

チエも慌ててその後を追う。


『最近エスカレートしすぎやありませんか?』

『それに耐えてこそ、やろが?』


しら〜っと言ってのけるトウコ。
疲れも手伝ってか、その表情は無機質に見える。

いつもこうだ。
この人は、ウチが動揺すんのを見て楽しんでるに違いない…。
絶対に。
くっそ〜〜!(逆恨み)


『…今日、トウコさんとこのお茶会ですよね?』

『うん。』

『帰り、うちに来て下さい。』

『なんで?』

『うちにメイド服あるんで…』

『は?』

『あそこであれだけ自然にあのセリフが言えるって事は、普段からの願望が入ってるから、じゃないんですか……?』

『てめっ!!』

『図星?だからちょっと噛んじゃった…?』


急に足を止めて、チエに詰め寄ろうとするトウコに、チエは仕返しとばかり身長差に物を言わせてトウコを見下ろした。
呆れてものも言えず、口をポカンと開けて固まってしまうトウコ。


『それやったら、叶えて差し上げたいやないですか〜♪』

『…なんか拾い食いでもしたんか?』

『遠慮しないで〜♪待ってますからね!遅くなっても全然構わないんで、絶対来て下さいよっ!』


それだけ言うと、スキップで楽屋へと向かうチエ。




『…トウコさんも大変だ。』

茫然とその姿を見送っていると、後ろからしぃがトウコの肩に手を置いた。

『あいつ、どっかで頭打った?それとも、暑さのせいで沸いた?』

『打ったのは聞いてないから、多分「沸いた」方だと思います。』

『『……はぁ〜』』


二人は同時にため息をついた。







一方、仕返しをしたつもり満々のチエは、

『トウコさんのメイドさん姿……クフフ…♪』


化粧前でメイクを落としながら、一人薄気味悪い笑いを浮かべていた。


組子達に遠巻きにされている事など、全く気付かないほどに、妄想が止まらないチエであった…。




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