拍手文庫
□続・似て非なる日常
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『…トーコさん?』
どうやら、暫くぼんやりしていたらしいあたしは、アサコの声で我に返った。
『ああ、終わった?』
『はい。…あの…』
『ん?』
あたしはベッドから降りて、シャワーを浴びに行こうとした。
と、部屋を出る手前で、アサコに腕を取られる。
『…何かいい事でもあったんですか?』
『……は?』
『アタシが風呂に入ってる隙に。』
『……??』
『…無自覚ですか?』
『……???』
『どうしようもない人ですね、ホント。鏡でちゃんと確認して下さいよ、その顔』
アサコが猛烈に失礼な言葉を吐いた。
『……なんやねん』
いつもなら言い返すところだが、時間がない。
アサコは適当に帰ればいいが、あたしはチエが迎えに来る。
余り待たせるのは気が引けるし、あたしのポリシーに反する。
『…顔?』
浴室に入り、洗面所の鏡に自分の顔を写す…。
『……うわぁっ/////』
そこには、あからさまに幸せそうに口許が緩み、軽く頬まで染めた自分の顔……。
思わずその場にズルズルと座り込んでしまう。
『…なんなん!あたしっ!!』
*。*。 *。 *。*。 *。 *。*。
『じゃ、アタシ帰ります。』
シャワーから出ると、身支度を終えたアサコがリビングでタバコを吸っていた。
トウコの姿を見ると、そのタバコを灰皿に擦りつけ、腰を上げる。
『そっか?……なんにもしてやれんかったけど、頑張りや』
『…なんか、さっきのトーコさんの顔見て思い出しました。』
『…?』
『アタシ、暫くミホのそんな顔見てないかもって。』
『……そっか。』
『…はい。』
『気を付けてな。』
『はい。ありがとうございました』
そう言って、アサコは帰って行った。
清々しい程の笑顔を浮かべて…。
『あたしの役目も、取り敢えずココでオシマイかな?』
…ちょっと寂しい気もするが、これからは惚気話でも聞いて楽しむのもいいかもしれない。
アサコは、これからまた変わる。
漠然とだが、そんな気がする。
『さて!うちのレオン君が来る前に、化粧くらいしとくか!!』
――FIN――
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