Main

□第二握
1ページ/4ページ

蒼は。
気づけば、自分で歩くことを忘れていた。

なんでも両親の言うことに身を委ねてきた。

蒼が自覚する欠点の一つだ。


物心ついた頃には、ピアノを始めていた。

手を丸めて、黒い鍵盤と白い鍵盤に叩くだけの、演奏とはとても云えないレッスンをしていたことを覚えている。

車のクラクション。

叩きつけた乱暴な音は、車の文句と似ていた。


水泳を始めた。

車で送迎されるがままに、全国規模の有名なスイミングスクールに通い、六つ級を上げた所で、中学受験の為挫折した。

人によっては嫌われる、塩素の臭いが好きだった。

着替えを終えなければいけない時間、授業が始まる時間、音楽が流れた。

蒼の準備はいつもこの音楽が鳴り終えてから、終わった。


体操クラブに通い始めた。

平均台でのでんぐり返しを一人成功して、メンバーの拍手を浴びたのが記憶に残っている。


小学三年生から、進学塾に通い始めた。

この頃の塾は、百マス計算や物語の音読をひたすらしていた。

学年の数が大きくなる毎に、クラスの人数は増え、少人数ながらその塾をやめて行った子もいた。

先生は皆、怖くて、面白かった。


バレエを始めた。

体操クラブに通っていた為、身体は充分に柔らかかった。

少し時間をかけて、バレエの友達の輪に入り、幾つかスタジオを変えて、バレエを続けた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ