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□第二握
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蒼は。
気づけば、自分で歩くことを忘れていた。
なんでも両親の言うことに身を委ねてきた。
蒼が自覚する欠点の一つだ。
物心ついた頃には、ピアノを始めていた。
手を丸めて、黒い鍵盤と白い鍵盤に叩くだけの、演奏とはとても云えないレッスンをしていたことを覚えている。
車のクラクション。
叩きつけた乱暴な音は、車の文句と似ていた。
水泳を始めた。
車で送迎されるがままに、全国規模の有名なスイミングスクールに通い、六つ級を上げた所で、中学受験の為挫折した。
人によっては嫌われる、塩素の臭いが好きだった。
着替えを終えなければいけない時間、授業が始まる時間、音楽が流れた。
蒼の準備はいつもこの音楽が鳴り終えてから、終わった。
体操クラブに通い始めた。
平均台でのでんぐり返しを一人成功して、メンバーの拍手を浴びたのが記憶に残っている。
小学三年生から、進学塾に通い始めた。
この頃の塾は、百マス計算や物語の音読をひたすらしていた。
学年の数が大きくなる毎に、クラスの人数は増え、少人数ながらその塾をやめて行った子もいた。
先生は皆、怖くて、面白かった。
バレエを始めた。
体操クラブに通っていた為、身体は充分に柔らかかった。
少し時間をかけて、バレエの友達の輪に入り、幾つかスタジオを変えて、バレエを続けた。