小説

□¶カサネ.※R18】
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我が輩に愛という感情を向けたのなら、行き着く先は決まっていよう。
だが、人間の女というものは、何かと『理由』を欲しがる生き物なのだ。

今この時も、ヤコは理由を欲している。
この我が輩の身体の下に、留まる理由を・・・

「…やっ、ネウロ痛いよ!」

この程度に胸を揉みしだいたくらいでか?
貴様に与えてきた、日々の虐待も拷問も、痛さで言えばこの比ではないだろう。
それでも涙など、滅多に流す事のない貴様が…
この行為に移ると、いつもこれだ。

「ヤコよ、貴様のリミッターは、身体、それとも心とやら…どちらに属している」

「リ、リミッターって何よ、訳解んない事言わないでよもう!」

…訳が解らんのはむしろ貴様の方だ。

既に数度、我が輩と共に快楽を味わったはずのその身体。
摺り込まれつつある快感に身を委ねる事を毎度拒むのは、心とやらにリミッターが付いている証拠か…

ならば、邪魔な身体の抵抗を奪いその心も捻じ伏せてやろう。
貴様が、我が輩に…快楽に…浸っていられるように。

まずは暴れるヤコの両の腕を一纏めにすると、頭上に引き上げ掌一枚でソファへと縫い付けた。

「!!」

すると…その眸に宿ったものは“諦め”に入り混じる“安堵”
それは我が輩からの蹂躙という名を借りた…最も滑稽で、最も上辺だけの、侍従関係の様。

これこそ貴様が今欲しがる『理由』なのだろう?ヤコ。

妙に大人しく成り果てた身体を見下ろし、我が輩は苦笑を漏らす。
言葉に出さず深層心理であるとはいえ、奴隷の求めに応じる主がどこにいる…
貴様の身体も心も懐柔しているつもりが、その実この数度の交わりで、
慣らされ、摺り込まれて来たのは我が輩の方だったのかもしれん。

「・・・ネウロ?」

訝しげな声音が、我が名をかたどる。

「ヤコよ、貴様はとんだ策士だな」

「へ?」

丸く見開かれた眸いっぱいに取り込まれた我が輩の擬態した器。
今この心に過ぎったものを紐解けば、どんな名が付くのか…
だがそれすらする暇が無い程に、寄せて来る熱はヤコを求め溢れ出す。


さて、そろそろ蹂躙の続きといこうか。

交差させて封じてある両の手首に、我輩は意識的に力を加えた。
それが熱い時の合図と成り得るように。

身体に溜まり過ぎた熱を伝える為に、口づけを繰り返す。
ヤコの口内を、舌を貪りながら、空いている片手で胸を突起ごと摩り上げると、
蓋をされた唇の奥からくぐもった呻きが漏れて出た。

互いの唾液でヌラリと光るヤコの唇を、舌先でなぞった後に解放してやると、
薄く瞼を上げ我が輩の表情を捉える。
…それは何かを窺うように、探るように、我が輩の思考に絡みつく。

「…欲に駆られた我が輩を見るのは楽しいか?」

「そ、そんなんじゃ…」

ヤコはドキリとしたように紅潮し視線を顔ごと逸らした。
何かを言いたげな眸とは裏腹に、その唇は硬く閉じられたまま。

フン…貴様が探りたいものなど解っている。
未だ言葉で伝える事をしない、我が輩の胸の内だ。


愛の言葉など、幾通りでも用意は可能。
それをこの声で、紡ぎ出す事も可能。


 首筋に舌を這わせ、既に硬く尖った胸の先端を口に含みながら弄る。


「あっ…ん」


…だが、湧き上がり蓄積され続ける幾種もの感情。
それに付ける名など果たして有るのか無いのか…
紐解くほどに複雑さを増す回答が、可能を不可能へと塗り替えていく。

ヤコ…貴様に囁いてやれる言葉を持てなくとも、想いは確かにここに有るのだ。


「あっ!ぃや、ダメぇそこ!!」


その声と共に、ヤコの封じられた腕が急激に意思を持つ。
唇と舌で胸を弄りながら、我が輩の指がクリトリスを責め始めたからだろう。
この行為は、ヤコ曰く『感じ過ぎて辛い』らしい…

「ネウロお願い、手を…」

望んだのは貴様だ。

「放して…このままじゃ耐えられない」

「耐える必要などはない、このまま登りつめろ」

「…違う…」

「何がだ」

「ゅ、指じゃなくって、ネウロの…で、イキたい…」

・・・ほう、珍しい事に我が輩をネダルか。
では、そんな奴隷には褒美を与えねばな…


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