小説

□‡安心の比率.
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◆YAKO SIDE.


「有り難うございます、お手数をお掛けしました!」

私は今、隣接する区の区役所に来ている。
ここの場所を知らなかった私は、この地区に住むクラスの男子に道案内をお願いした。
そして既に用事も済み、ご協力をお願いした係りの人にお礼をいうと、自動ドアから一歩を踏み出す。

区役所に来た私の目的はとゆうと、この区に住む人達の住民台帳を見る為。
手順から言えば、こんな事は初期にする事なんだろうけど、
ネウロに解放される時間はいつも夜だ、そんな時間に区役所が開いているわけがないのだから仕方がない。

でも…いったいどうゆう風の吹き回しなんだろう。


『ごめん、急用があるから少し遅れる』


ダメ元で、ネウロに送ったメールの返事は、目を疑うものだった。
そして本当にその言葉通り、その後メールで脅される事もなく、
電柱の影からいきなり伸びてきた手に、身体を引きずられる事も本当に無かった。
ちょっと気味が悪い…
でも、これで何とか、点と点を繋げる事が出来たんだから、素直に感謝しておこう。


私が今しているのは、探偵のマネゴト。
今までの事件で見てきた、ネウロや笹塚さん達の捜査手順を参考に、見よう見まねで紐解き始めたのは…
謎入りと思われる事件。
そう、これは私からネウロ宛ての…クリスマスプレゼント。

その準備を始めたのは、一ヶ月程前だった…
まず吾代さんに、出来るだけ謎っぽい事件を集めてもらい、私目線でふるいにかけた。
本当は、出来るだけカロリーも味も良さそうなものを選びたかったけど、今回、調査をするのは私だ…
時間的にも、そして能力的にも…扱えそうなものは、当然限られてくる。
最初数十件あった筈の事件は、上記の理由からボロボロとふるいから漏れ、
たった一件の、小さな事件だけが残る結果となった…

それでも多分、これには謎が含まれている。
…小さいし、あまり美味しくはないのかもしれないけど…
プレゼントなんだから、贈る事にこそ意味があるっ!
そう自分に言い聞かせながら、私は頑張ってきた。


あの、謎を解いた帰り道から始まったネウロへの秘密。
本当は、もっと一緒にイルミネーションを見ていたかったけど、私は吾代さんからの…


『纏め終わったぞ』


一言だけの、短いメールを選んだ。
クリスマスは必ずやって来る、イルミネーションも一緒の時間も、その時に楽しもう!…そう決めたから。
私は調査をしている間中、ずっと料理をしている気分だった…
ケーキが食べられなくても、七面鳥が食べられなくても、ネウロには謎がある。
だからこのプレゼントは、私からネウロへの、手作り料理なんだ。


移動に時間が掛かったせいもあり、既に辺りは闇に包まれ始めている。
ここのところのハードワークで、ちょっと疲れ気味ではあるけど、
それでも、事務所に向かう足取りだけは、不思議と軽やかだった。


* * * * *


「ネウロ来たよー、遅れてごめん」

…って、あれ?
そこで待ってくれているものと思っていたネウロの姿は、事務所のどこを見渡しても…なかった。

…どこに行ったんだろう。謎を探しに行ったのかな…
でも、それなら直ぐに帰ってくるはず。
帰って来てくれなきゃ困るよ…だって、私はまだ、ネウロに明日の予定さえ伝えていないんだから…

巡る思考の片隅で、聞き慣れたコンコンっとゆう音が響いた。

そうだ、あかねちゃんなら知ってるよね、ネウロの行き先!

≪ヤコちゃん、お帰りなさい≫

「ただいまあかねちゃん!あのさ、ネウロどこ行ったの?」


≪…それがぁ…≫

「ん?」

あかねちゃんの、ボードを走るマジックのスピードがガクンと落ちた。
おまけに“ … ”まで付けている…
これは、かなり言いづらい事なのかもしれない。
いったいどうゆう事なんだろう…?


「 魔界!? 」

躊躇いながらあかねちゃんが書いた文字は、信じられない事に…“魔界”の二文字だった。

「…本当なのあかねちゃん?」

あかねちゃんはかなり遠慮がちに、毛先をコクリと下げる。

「そ、それで、何しに行くのか言ってた?」


≪ …そ…それはぁ………;;;≫


 うっ…

またしても言いづらそうに、沢山の“ … ”と、語尾には汗のイラストまで描き始めた…
でもこれは、理由を知っているからこその戸惑いだ。

「お願い教えて、あかねちゃん!」

すると、今度は意を決したかのように、ボードが揺れる程の勢いで、一気にマジックを走らせ始めた。
そして書き上がったその理由は……


≪ 愛のイベントに参加しに戻る。 Byネウロさん ≫


―――――え?



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