小説

□‡実情の後先.
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* * * * *


「魔人といえど我が輩も生物。
人間で言う所の、幼少期、少年期、思春期、青年期と、歳月を経てきた訳だが、
その成長過程で、湧き上がる欲の存在を認識し、
その欲を開放していた時期がある」


「…欲?
フェロモンじゃなくて…?」


「吾代には説明してやるのが面倒だったから、フェロモンで手を打っただけだ。
正確には、性欲とゆうものだろう」


「…え…、フェロモンよりそっちのが判り易いと思う…;」


「 そうか、…フム
例えば、ペリプラノンBとゆう物質がある、
これはゴキブリのフェロモンであるわけだが…」


……は?……何の話?;


「それを最初に発見した人間は、
ゴキブリを50万匹纏めて磨り潰し、水蒸気蒸留にかけるとゆう、少しばかり壮絶な実験を行っ 
  「!!聞きたくないからソレッ!!!」


「まあ聞け、残るは結果のみだ。
だが、得られた物は、1mgにも満たなかったらしい…
それでも、どれ程微量であってもソレは、
見る事も、触れる事も可能であるのに対し、
欲は存在ですらないのだから、我が輩にとっては、余程難解で、厄介は代物なのだ」


ああ…、ネウロは感情の大本である、欲に戸惑ってしまうのか…



「人間で例えるなら、思春期と言う辺りで、
膨れ上がった欲を開放…
つまり、初めて同族の女を抱いた」


…ほら…やっぱり。


ネウロの腕の中で軽くなりかけていた、
私に巣食う鉛の玉は、
水を吸い込む真綿のように、不安を吸い込み、
その重みを増してゆく…


「その欲の制御を失った我が輩は、
言い寄る女を、この手で抱き尽くした。…覚えたての時期に暴走するのは、魔人も人間も変わらんのだ」


…消化…しきれないよ、こんなの……


私はギュッと瞼を閉じ、
ネウロの背中に、爪が食い込むほどの力でしがみ付く……
心の痛みを、受け流す為に。



「そうして欲に支配された結果…
我が輩は死に掛けた」


「 ……え? 」


「欲とゆう物は、
その目を曇らせ、判断力を低下させる。
思うように謎が喰えなくなった我が輩は、
限界ギリギリのところまで追い込まれる事となった。
そこで初めて気付いたのだ…
欲が、我が輩にとって如何に不必要であるかとゆう事に。
そして、生命維持に直結する欲、それ以外の物を自ら封じ込み、
感情を超越する術を学んだのだ」


大本の欲を封じているから、感情が希薄な…、
今のネウロが在るんだ。

…その女の人達が、
結果として、今のネウロを作ったのかもしれない…


「…ねえ、ネウロ」


「なんだ」


「…魔界で、今でもネウロの帰りを待ってる人が…
いたりするの?」


「…? 何故我が輩の帰りを待つ必要がある」


「いや、だって、なんかたくさんいたみたいだけど、愛情を感じてた人だっていたんでしょ?:」


「愛情とやらで結ばれた関係を持った事など、
一度もないな。
それ以前に、同じ女を二度抱いた事すらない」


「 ……本当に?
あ、でも…それってなんか、酷い男の代表みたいな気がしてきたんだけど………;;;」


「では、愛情込みで抱いていれば、貴様は満足だったのか?」


「い、いやそれも違うけど!;」


「貴様のゆう事は良く解らん。矛盾だらけだ」


「 …ぅ;」


「それから、魔界の男女関係を人間のそれに当て嵌めるな。あそこは貴様の理解など超越している」


「…はぁ…さいですか;」








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