小説
□‡後悔は払拭を待ち侘びる.
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* * * * *
ここは自分の家だ―――
なのに、何でこんなにも落ち着けないのか…
もう嫌になる位、ソワソワしっ放しで、
気分的にかなり疲れて来てしまっていた;
私は自宅に戻ってから、母にメールを入れた。
帰宅時間が不規則な母に、今日のソレを聞き、
…そして、今夜ネウロがお母さんに会いに来る予定であることも、
短く伝えた…
時間はもう直ぐ、9時になろうとしている。
そしてそれは、お母さんが戻る、推定時刻…
リビングに居ても落ち着かない私は、30分程前から玄関で待機していた。
ネウロは恐らく、フライデーの映像で、お母さんの帰宅を確認してから来るつもりなのだろう。
まだ現れてはいない…
「…あ」
家の前で車が停まる音…、
それに続き、ドアの閉まる音が聞こえた。
お母さんはいつも、駅からタクシーを利用している。
お母さんだ。
私は、お母さんが玄関に辿り着く前にドアを開けた。
……するとそこには、
お母さんと、その荷物を持ち、激しく助手顔のネウロ。
二人は、にこやかに談笑しながら、こちらに向かって来た。
「あ、先生」
「あら弥子。今タクシーを降りたら、ちょうどネウロ君と会ってね…」
「…そ、そうなんだ。
お帰りなさい、お母さん」
「さ、ネウロ君も上がって」
既に玄関に入ったお母さんが、ネウロに声を掛けた。
「はい、失礼します」
ネウロもお母さんに続き、玄関の中に入る。
私はドアを後ろ手に閉めると、廊下を歩いてゆく、
お母さんとネウロの後ろ姿を凝視する…
……いよいよだ。
まさかこの歳で、自分がこんな経験するとは思ってもみなかった。
…お母さんだって同じだよね…
お母さん…
怒るかもしれないな……
「弥子〜、何してるの?
早くお茶の準備!」
「あっ、…ぅ、うん」
いけないいけない…、シッカリしないと…;
どうせネウロは飲まないけど、
私はキッチンで三人分の紅茶を入れ、それをトレイに載せリビングへと運ぶと…
リビングからは、何を話しているのか、ネウロとお母さんの陽気な笑い声…
私は、細く開いたドアから、二人の姿を見詰める……
そっか…
お母さんが承諾してくれたら、私達家族になるんだ…
ネウロは普通じゃないし、
人間ですらないけど…
それでもネウロを、
“家族”ってゆう絆が結んでくれる…
繋ぎ止めてくれる…
そんな、気がした。
私は、少し落ち着いた心持ちで、二人の待つ、リビングへと雑ざる。
「私のいない間に何の話し?」
「今お母様に、先生の幼少の頃の武勇伝を伺っていたんですよ」
「え…、武勇伝…?」
「ほら、あったじゃない。
小学生の時のマンボーの絵とか、遠足の時の話しよ」
『!!!それ武勇伝違うし、いっそ忘れていいからそんな記憶!!;」
「あら、忘れるなんて勿体無いじゃない。
…どれもこれも、一人娘の大切な思い出だよ…」
「…お母さん…」
「先生も揃ったことですし、今日伺った本題に入らせて頂きたいのですが、宜しいですか?」
「あ!…待ってネウロ君。
んー…、弥子のメールを見た時から、心の準備はして来たつもりなんだけど…
やっぱり駄目ね、母親って…
いざって時に、どうしてもパニックになっちゃうのよ」
…気が付いてたんだ
心の準備までして……
少し取り乱しながら、苦笑を漏らすお母さんの姿に、
私は…、どうしようもなく胸が痛んだ…
「うん、 大丈夫よ!
で、何…予定日はいつなの?男の子?女の子??」
「!はぁぁぁあああ!?」
何の準備してんだこの人はーーー!!
「ガッカリさせて申し訳ありません。
では仕込んだ後に、日を改めて…」
「っておい!!あんたもサラッととんでもないないことをゆうな!!!」
「…え‥違うの?私はてっきり、事後報告なのかと……;」
「違うよ!!!」
「そっかー、良かったぁ。
私この歳で、おばあちゃんになるのかと思ったら、
落ち込んじゃったのよ〜」
そっちの心配!!?;;;
ああ…何か気が抜けて行く……;
なにこの展開……
「はいはい、
仕切り直すわよ!!
じゃ、ネウロ君、話しの腰を折っちゃてごめんなさいね;
今なら何でも聞くわ。
本題ってのを言ってみて」
「…では」
あ…ネウロの助手の仮面が外れた気がした…
あの時の、墓参りの時の…凛とした表情―――
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