小説

□‡核心は甘く遠く….
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日中は確かに晴れていた。
我が輩が仮眠から目覚めると、事務所の中は薄暗く、
窓の外に視線を向けるとそこには、曇天が拡がっていた。
 
 
 
 
「…今にも泣き出しそうな空とは、このような物を差すのだな」
 
 
 
 
分厚い雨雲を見上げながら、独り声を漏らす。
 
 
それから程なくして、雷鳴と共に大粒の雫が、地面を目掛けて放たれた―――
 
 
 
ガン!ゴン!パシッ!コーン…
 
 
「…?」
 
 
 
奇妙な雨音に、我が輩は窓を開け外を窺う。
…すると、コツンと何かが飛び込んできた。
それは氷の粒で、床に落ち、コロコロと転がった。 
 
 
 
「…雹か」
 
 
 
…もうすぐヤコが来る時刻だな。
 
 
 
昨日は調度良い時間帯に、
謎の気配を察知したにもかかわらず、
あのウジムシは、補習とやらでここに来るのが遅れ、事もあろうことか、主人の食事の鮮度を落とす事に一役買ったのだ。
 
そんな事もあり、我が輩は仮眠を取る前に、ヤコの携帯へメールを入れた。
“今日は何があっても、時間厳守で来い”…と。
 
 
 
 
「さて、遅れた場合の為の準備に取り掛かるか」
 
 
 
我が輩は、何時もの拷問道具を列べ、しばし思案する。
 
…だが、既にどれも飽きていた。
 
 
 
 
…フム、何か新しい虐待方法を模索する必要があるな。
 
 
 
 
我が輩はパソコンを起ち上げると、適当な語句を並べ検索を掛けてみた。
……すると、
 
 
  
「おお、成る程」
 
 
  
と、唸ったところでけたたましくドアが開いた。
 
 
 
そこには――――――
 
 
  
「もう 最悪!!」
 
 
 
ずぶ濡れで、ボロ雑巾のようになったヤコが、
眉を吊り上げ、不機嫌そうに立っていた。
 
 
 
 
「ほう、なかなかいい眺めだなヤコよ。雨宿りもせずに来るとは殊勝な心掛けだ。貴様もやれば出来るではないか」
 
 
  
「お菓子を人質に脅されてさえなきゃ、雨宿りくらい普通にしたかったわ!!」
 
 
 
ヤコは不満を並べたてると、ロッカーから着替えを取り出す。
 
 
 
 
…ずぶ濡れのヤコ
 
…着替え…
 
 
  
これはまさに、今の我が輩にとって、打ってつけのシチュエーションとなった。
 
 
  
取り出した着替えとタオルを持ち、ブツブツと文句を言いながら、
給湯室へと向かおうとしていたヤコを、我は輩は背後から呼び止めた。
 
 
 
 
 
 
 
 
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