小説
□‡覚悟をなぞる.
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* * * * *
えっと…
このマンションだよね?
…502号室か。
吾代さんは望月さんの会社の副社長になり、それ相応のお給料が貰えるようになったので、
新たにマンションを借り、そこで独り暮らしをしている。
思えば、結構長い付き合いだけど、
私が吾代さんの部屋にくるのは、初めてだった…
……独り暮らしの男の人の部屋ってどんなだろう…
やっぱアレかな…
俗に言う、男ヤモメに蛆が湧くってゆう感じなのかなぁ…;;;;
ちょっと見るのが恐い気もする。
私は来る途中で買った、ポカリとフルーツの詰め合わせを手に、502号室のインターホンを押した…が、
応答がない…
寝てるのかな…?
でも折角お見舞い持ってきたし、様子も見ないと…;
私は再度、インターホンを押してみた。
…すると、掠れた声が
『…誰でい…』
と、漏れてきた。
…うわ…、具合悪そう…;
「あっ、吾代さん私、弥子だけど、ちょっとお見舞
「ガチャッ!」
「……;;; あれ?」
拒否られた!!?
あっ、…もしかして…
私は、しつこくインターホンを押した。
『てめぇらの顔なんか見たら、治るもんも治らなくなっちまうだろーが!!!』
「いや、吾代さん落ち着いて!ネウロは事務所!
今日は私一人だから!;」
『…んあ?…化け物は抜きか…』
…やっぱり、ネウロを警戒してたのか;
「ここ、開けてくれない?邪魔だったら顔見たら直ぐに帰るから…」
『見舞いは遠慮しとくよ。
どうせ何も食う気おきねぇし、それに…』
「…それに?」
『まあ、…これ、辛ぇから、移んねぇうちに帰れや…』
…吾代さん……
「あのね、私インフルエンザの予防接種受けたし移らないから気にしなくて大丈夫だよ!」
…私は嘘を吐いていた。
いや、インフルエンザの予防接種を受けたのは本当だけど、
今はもう夏…
既に効果は消えているだろうし、残っていたとしても、
移らないのではなく、軽く済ませる為の薬に過ぎない…
でも、もしかしたら、
吾代さんはそれを知らないかもしれない…
この人に、予防接種なんて物は無縁な気がしたので、私はそこに賭けたみたのだ…
『…んだよ…、そんな便利なモンがあんのかよ…
知ってりゃ俺も受けたかったぜ;…』
かかった!!
ごめんね吾代さん、後でちゃんと本当の事教えてあげるから…
足音がドアの前に近付き…
鍵がガチャリと外され、中から…
「おい、開けたぜ。
勝手に入ってきな…」
と、掠れた声が行動を促してきた。
「うん、お邪魔しまーす…」
…初めて入る部屋を、失礼にならない程度に視線を巡らせてみる…
その部屋は、私が思っていた程散らかっているわけではなかった。
…と、ゆうよりも、
物が少ないので、すっきり見えるだけなのかもしれない…。
奥に進んで行くと、
ソファーに凭れた吾代さんが、気だるそうに…
「よう…」
と、手を上げた。
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