小説

□‡覚悟をなぞる.
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□YAKO SIDE. 
 
 
 
「…え、マジで!?」
 
 
 
「どうしたヤコ?」
 
 
 
「あ、…吾代さん、インフルエンザでもう三日も寝込んでるんだって;」
 
 
 
「…ほう」
 
 
 
「そっかぁ、んじゃ資料は私が取りに行ってくるから、吾代さんは無理しないで、早く良くなってね」
 
 
 
「インフルエンザごときで三日も寝込むとは、微生物にも劣る不甲斐無さだな。…夏風邪は馬鹿がひくとゆうが、あながち迷信でもないようだ。
だがしかし、それでは貴様が馬鹿ではないみたいではないか、なあヤコ」
 
 
 
…はいはい、地味〜な言葉責めは今更聞く耳持たないからいいとして…
 
 
「ネウロ、帰りにちょっと吾代さんの様子見に行ってくるけど、なんか言伝とかある?」
 
 
 
…すると、口角を吊り上げたネウロが、中指を立てて見せた…
 
まあ…、これも見なかった事にしよう;
 
 
 
私は、吾代さんがピックアップしておいてくれた、事件の資料を取りに、望月信用総合調査のビルへと向かった。
 
 
 
 
* * * * *
 
 
「望月さんこんにちわ。資料を取りに伺いました」
 
 
 
「やあ桂木さん、ご苦労様です。電話を頂ければ代わりの者に届けさせましたのに…」
 
 
 
「ああ、いえそんなぁ、皆さんお忙しいでしょうし、ご面倒をおかけする訳には…。
それに、吾代さんの様子も見に行きたいので、そのついでです」



「おお、吾代君はまだ熱が下がらんのですかな?」



「ええ、そうらしいです;」



「彼は独り暮らしだし、何かと不便だろうから、経費で身の回りの世話をしてくれる人間を付けると言ったんですが…
『移る病気ん時に、他人を傍に置けるか!』
っと、断られました;」



「…そうなんですか」


なんか…
吾代さんらしいな。



「じゃ、この中から持てる分だけ、頂いて行きますね」



「そう断ると、私はダンボールの中の資料を、バックに詰め込み始めた。



「ああ、そうだ桂木さん」



「はい?」



「吾代君に言伝をお願いしても構いませんかな?」



「はい、なんでしょう?」



「丸ロボの254面の脱出方法が解らんので、至急連絡を貰いたいと…;」


…は?;


「いやー、昨日電話を入れたら着信拒否になってましてな〜。
吾代君は柄に似合わず、用心深くていけない。はははははは」



…いやそれは、貴方のみに向けられた用心だと思います…;

まあ、吾代さんにしてみりゃ…、私も同列か…;



着信拒否をされた、悲しい記憶が甦ってきた。



「じゃ、じゃあ、お忙しいところをお邪魔しました〜;」


…当然この人の伝言も、聞かなかったことにして、私は逃げるようにその場を立ち去った。








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