小説

□†背徳の生を紡ぐ.【※真裏】
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◆YAKO SIDE.


「あ〜〜、やっぱここのうどんは最高!!」

「…そりゃ良かったね。どーでもいいけど、あんたの周りにウザイくらい花が見えるんだけど…」

「え?やぁだなぁ叶絵目腐ってんじゃないの?錯覚だよ錯覚ぅ!」

「いや、錯覚なのは百も承知だから…
つか、あんた判り易ぅ…」

「ん?」


今は学校の帰り道、私は恋愛のスペシャリストこと籠原叶絵と、
絹屋で大好物の讃岐うどんに舌鼓を打っている。

「あんたさ、あの【屋上締め出され事件】の後からぜんっぜん報告が無いってのはどうゆう訳よ」

「い、いや、その節は色々とご迷惑をおかけしましたぁ…」


そう、ネウロに跳躍で連れて行かれ二人で夜景に見とれた後に、
放置プレイを喰らった私が頼ったのは叶絵だった…。

しかしあの時は説明に困ったなぁ…

自分が締め出されているビルの名前も地名も判らなかった私は、
携帯で叶絵に連絡を取り、屋上から見える夜景を頼りに場所を特定してもらったのだ。

『ああ、そこなら黒住化粧品のビルじゃない?』

即答で答えてくれた叶絵に感謝しつつ、ついでに電話番号も調べてもらい事なきを得たのだった。



そしてその後に起こった展開は…
話せる部分自体が少ないので……何も報告はしていなかった。


「で?脳噛さんとは巧くいってんの?まさかまだ付き合ってんでしょ?」

「え…あっ…ぅん」

いや、公園で目撃された時は偽者デートだった訳なんだけど…
でも、まっ、いいよね。“付き合っている”という括りに収めていいのかよく判んないけど、
今は確かに、私達の関係は変わっている。


「…まあ、あんたのそのお花畑にでもいるような表情を見れば、
聞かなくても何となく判るけどね」

「え?そ、そんな浮かれた顔してるかなぁ私。
そんなつもり無いんだけど」

「いいんじゃない?隠す必要なんてないよ。
ヤコが幸せでいてくれるのは私も嬉しいし」


「…ありがと、叶絵」

お父さんの事もあったし…
叶絵には色々と心配掛けてるなぁって、心から思う…
だから思わず、


「大好きだよ叶絵!!」

と、私が抱きつくと


「ちょっ、キモッ!あんたソレ言う相手間違ってるから」

「あ、ひどっ!」


少し傷ついた…

「って…あ、ヤダ待ち合わせに遅れちゃう」

「え、デート?」

「金曜の放課後に予定入ってないなんて有り得ないから。
ヤコも早く脳噛さんのところに行って甘えてきたら?」

「!あっ…甘え!?」

叶絵はせわしそうに私に言葉を投げながら財布を取り出すと、
自分の分の支払いをテーブルの上に置き店を出て行った。



…甘えるなんてのは私とあいつの次元に存在しない言葉だと思うよ、うん。

私は独り苦笑しつつ会計を済ませ、店の外へ出た。



とたん、携帯が鳴った。





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