小説

□†等価交換
2ページ/14ページ


正直、ここまでの危機感を私はあいつに抱いた事は無かった。

投げられても蹴られても、吊され椅子にされようともだ…
多分私の精神の許容範囲は、あいつによってマイナス方向へ広げられたと確信している。

でも…
それでもこの一線だけは守りたい!

その強い想いに、自分にとってその行為がどれ程大切な位置付けなのかという事を、改めて思い知った。


――そうだ!
…調教して行こう!!


頭デッカチのあいつはそこに辿り着くまでのプロセスを知らない…
なら経験させてやればいい。
人間だってその身をもって経験しなければ、理解し得ない事は沢山ある。

私はあいつの一番傍にいるのだから、これは私にしか出来ない私にかせられた使命なのだ…………多分。



見上げれば、そこは既に見馴れた雑居ビルがそそり立っていた。
たった今思い付いただけの、傾向と対策を心の支えに、私はビルの入口にその身体を押し込んだ…
己の背中を押す者は、己しかいないとゆう事実が、より決心を強固な物へと姿を変えさせる。


変えてやる!あいつを!魔人を!ネウロを!!


そう心の中で叫ぶと、事務所のドアを勢いよく開け放………ったとたん、

天と地が逆転した―――



「遅いぞ、ヤコ」

大きな窓の前の所長椅子に踏ん反り返り、足をトロイに投げ出した状態の…
声の主がそこにいた。

窓から射す西日が逆行となり、顔に濃い影を落としているにも拘わらず、
その口元が釣り上がっているのが判るってのは…こいつに恐怖を擦り込まれているからだろうか……?

「って、何にもしてないよ!学校終わって直ぐに出たし、あんたからのメールだってその時見て、普通に歩いてきただけじゃん!!」

「ほう、普通に歩いて1時間以上とは、貴様はナメクジ以下だな」


しまった……気付かない内に牛歩戦術をやらかしてたらしい…

あれだけ思考を巡らせていれば、当然の結果か…ネウロから目を逸らし独り苦笑する。

だけどそれをしたかいあって、思い付きとは言え対策を見出だせたのだから、この不条理な逆さ芋虫のような責めも、今日だけは甘んじて受けてやろうとゆう、心の余裕すら生まれていた。


………が、

心とは裏腹に身体は…
血液が頭に下がり既にレッドアウトすんでのところまで追い込まれている事に気付く。

ヤバイ…このままじゃ墜ちる!




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ