小説

□¶明滅は鍵に依存する【ラスト/裏Ver】
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◇YAKO SIDE.


「では、我が輩も飽きるくらい貴様を貪るとするか」

「え、あ!?」

そう言うや否や、私の身体はネウロに抱き上げられ、ソファーへと落とされた。


「我が輩が暖めてやる」

「あんた体温低いじゃんってかいきなり過ぎだし!!…え…なにその顔ドSモードまでON!!!?」

私を見下ろすその目は、完全に獲物を捕らえた捕食動物のソレになっていた。

喚く声を完全に無視すると、その長い指をストールに掛け、スルリとテーブルに落とす…
その姿のあまりの艶かしさが、昨夜のネウロを思い出させた。


「貴様らのせいで謎を一つ潰してしまったからな、その補填は貴様の身体でさせるしかあるまい」



 ・・・・ギシッ

「はあ!?それ話が違っ…デカイ謎にはなりえんって自分で言った癖に!!!」

「逃がした魚はデカク感じるのだ」

 何を勝手な事をおおおおおおおおお!!!

肌蹴ないようにギュッと握っていたジャケットの手は呆気無く引き剥がされ、
しっかりと止めていたはずのボタンも、二本の指が次々と外していく…

 ちょっ…待って!この下何も着てないんだってば!!!

そして私が今更気付いた事がひとつ…この場所と、もう1人の住人…

「…いやでも、ここ事務所だし、あ、あかねちゃんが…」

「既に寝た」

「え!?早っ!!!」

壁に目を向けてみると、定位置の壁紙は確かに膨らみ、生活反応も感じられない。

あかねちゃんに気を取られていた私は…気付けば、両の腕は固定され、ネウロの身体の重みが自由の全てを奪っていた。

「でででででもまだこんな時間だし誰か来たら」


―――――ガチャッ―――

 !!

「そら、閉まったぞ」

「魔力で遠隔操作!!!?」


 そりゃ私を逃がさない為だろうけど、そこまでしなくたって…


「・・・・イヤか?」

 そんな顔したって…どうせ選ばせる気なんかないくせに。

「…うっ……イヤじゃないよ、バカ」


私は眸を閉じて全身の力を抜いた。
それが合図になったのか、ネウロは私の両の掌を解放し…キスをくれた。

自由を取り戻した掌で、そっとネウロの頬に触れてみる…

 …大丈夫、どんな未来が来ても私はこの感情で、あんたの全てを憶えてるから。


「・・・何故泣く?」

唇を離したネウロが、私の涙の理由を聞いた。

「これは…証拠だよ」

「証拠?」

「うん…今、私の全てがネウロを刻み込んでる…証拠」

だから、不安や悲しみで泣いてるんじゃなくて…この涙は、私の心がちゃんと反応してる証し。


「…感情に刻む…か。ならば、我が輩は我が輩の方法で刻むとしよう」

「 あ… 」

ネウロは私の身体中に、唇を…舌を這わせ出す。

「ちょっ…なんかそれ違う、それじゃネウロにじゃなくて私に刻んでるんじゃん!」


「…貴様の声や仕草」

 え?

「我が輩だけが知り得るこの時のヤコを…余す事無く刻み込む…」

「ネウロ…んっ」

ネウロの舌が、唇が、指が…私の全てを曝け出していく…


「だからこれは、我が輩だけの記憶だ…その甘い声も、朱に染まる頬も」

「はぁっ!」

一番敏感な場所に到達した指と舌は、更に深い私を引きずり出した。

「快楽に浸るその表情も全て…この我が輩だけに向けていろ……他の男の記憶に棲むな」


「ネ…ネウロ、もう…ダメッ!」

思考が飛びそうな程の刺激…その大元にあるのは、ネウロの独占欲と嫉妬心の現われなのかもしれない。
匪口さんが付けた傷…それは私を苦しめたけど、苦しかったのは私だけじゃなくて…きっとネウロも。


「!ああっ!!!」

意識が堕ち掛けた私の脳を更に強い刺激が襲う。

ネウロがいきなり私を深く貫いた。
片足を持ち上げられた体勢のせいなのか、苦しいくらいに私の中をネウロが満たす…


完全に重なり合った身体が互いの熱を伝え、その想いも流し込む…
膨れ上がった想いは求める姿を導き出し…私は全身でネウロを受け入れた。

 この存在になら、もう壊されても構わない。

ネウロの腰の動きに誘発されて、私の声が…溢れては消えた。


――――ガチャガチャッ―

「 !!! 」

 な、なに!?


誰かが事務所のドアを開けようとする音が耳に入り、トリップ寸前のところで私の思考は引き戻された。


「・・・・チッ、吾代め」

 え、吾代さん!?

「おい、なんで鍵掛かってんだ!?中にいんだろ?声聞こえたし」

 げっ!…外まで聞こえてた!!?

「つか、おい化物!テメー動かねえつっときながらビル潰れてんのは何でだ!!ニュースで大騒ぎになってんぞ!…おい聞いてんのか!!!」

 …マズイ、このままじゃドアを蹴破ってでも入ってきそうだ!!

「ネウロどいて、私隠れるから…」

「声を出すな」

「え、だって見られちゃうよ!」

「テメーがそのつもりなら、意地でも蹴破るぞ!!」

吾代さんはガンガンとドアを蹴り付けだした。

 ほ、ほらぁ…こんな姿を誰にも見せるなって言ったのネウロじゃないの!!!?

鍵がガチャガチャと怪しい音を立て始めた…限界が近いのかも。

 ああもう…


―――――ドガンッ!!!

 絶体絶命っ!!!


「・・・あれ?ホントにいねえのか・・んじゃさっきのは空耳かなんかか??」

  ………え?…あ、イビルキャンセラー?

 ああ、元々髪濡れてたから掛けられたの気付かなかったよ…


吾代さんは事務所中を見回し住人の不在を確認すると………その後我に返ったようだ」


外れてしまったドアを慣れた手付きで直すと、そそくさと逃げるように立ち去っていった…


 …寿命が確実に縮んだ、絶対。

「…ドアは直ったようだけど、鍵は壊れちゃったね…」

「なに構わん、どの道修理費も修理も吾代の役目だ」

 ごめんね…吾代さん。


「ネウロ、鍵も閉められない事だし、今日はもう…」

「 まだだ 」

「 はあ!? 」

「せっかく道具を使ったのだ、切れるまでまだ時間はある」

「ちょっと冗談…うひゃっ!?」


私の身体はうつ伏せにされ、腰を持ち上げられた。

「誰にも気付かれたくなければ、声を出さなければいい」

 知ってるけど………ム、無理だよぉぉぉぉ。


「・・いくぞ」
「んっ!!」

私は始めての体勢で貫かれ…漏れる声を、ソファーに顔を埋め必死で塞き止めた。
でもこのドSは、そんな私の努力なんかお構いなしで攻め立て始めた…
寄せる熱が身体に溜まり……私の喉を抉じ開けだす。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ


後ろから覆い被さったネウロが、快感に耐える私の耳元で囁いた…


「…声を殺すのが切ないなら、我が輩に口づけろ…その声を飲み込んでやる」

抱き上げられた身体はネウロの膝の上に下ろされ、私は自らネウロを迎え入れた…


「……あっ…」

小さく漏れてしまった声を隠したくて、求めたネウロの唇は…その言葉通り、私の声を飲み込んでいく。


―――ああ…でももう、限界っ

私はネウロの身体にしがみ付き、キツク抱かれた腕の中で登りつめた…


* * * * *
◇NEURO SIDE.


一瞬早く果てたヤコの奥深くに、我が輩も精を吐き出した…


ヤコ…今貴様の身体に残したものは、記憶ではなく物質だ。
我が輩の存在が確かなものなら、やがてそれは命と変わる…



そう・・・全ては可能性なのだ。

ヤコの進化も、
子を残せるか否かも、
究極の謎に出遭ったその後に訪れる未来も…何もかも。
答えが出てみなければ、何も解りはしない。


それでも、ただひとつ言える事は……ヤコ、


「貴様との時間は、愛おしいぞ」




Fin.2009.04.02
 

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