□タカラモノ:文□

□『in other words』【黄昏様作品】
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『in other words』


「ネウロ〜あかねちゃん〜。って、・・え?」

いつものように弥子が放課後、事務所にやってくるとそこには”ネウロ”が居た。
いや、居るのは当たり前なのだが、それは人型ではなく大きな嘴と角を生やせた鳥型、そう本来の姿だったのだ。

「今更何を驚く必要がある。」

ネウロは大きな嘴を上下させて言った、嘴の端から涎が流れている。

「いやぁ、その・・。久々にグロテスクな本性を見たな・・と。」
「フン、グロテスクとは失礼な。これから貴様に素晴らしい体験をさせてやろうとこうやって魔力を充電させていたのに。」

−絶対嘘だ、どうせわたしの驚く表情を見たかっただけに決まってる−
弥子はため息を漏らす。

「んで、その恰好で何を体験させてくれるの?どうせロクでもないDVだろうに・・。」
「なにぼそぼそ言っている。 」
「いいえ、なんでもありません。」

弥子はネウロを無視してソファに腰掛けお菓子を食べながら雑誌を眺めだした。

「貴様、まったく我が輩の言うことを信じておらぬな。まあよいもうしばらく経ってから実行するからしばらくそうしていろ。」

そう言うとネウロはトロイの前の椅子に腰掛けた。
外は徐々に暗くなっていく。
しばらく 静かな時が流れる。
時折弥子がネウロの様子を見やるもネウロは鳥型のまま目を瞑って椅子に腰掛けているだけである。

−そんな恰好でなにをしようというの・・?−

目を瞑った鳥型ネウロをじっと見つめる。

−この姿はやはりそうそう見慣れるものじゃない−

しかし、見つめていくうちふと嘴に触れたくなってそろそろとトロイに近づいた。
そっと嘴を撫でてみる。
ダチョウの卵のような質感にも似てるそれは明らかにこの世界の住人でないことを示している。
おもむろに弥子は目を閉じ嘴にキスをした。

「なかなかいい度胸をしているな。」

低いネウロの声が聞こえた。
ハッとして弥子は嘴から唇を離す。

「我が輩が貴様を噛み切らないと思っての行動か?」
「・・え?」
「こうやれば簡単に貴様の頭を食いちぎることも出来るぞ。」

ネウロは大きく嘴を開け弥子の頭にかぶりつく。
一瞬にして弥子の視界が真っ暗になった。

「怖くないのか?このまま我が輩が嘴を閉じれば貴様の頭は胴体から永久的に離れてしまうのだぞ。」

弥子の脳内にネウロの声が響き渡った。
不思議と弥子は恐怖を感じなかった。

「それなら、それでも良いかなって。それがあんたの言う素晴らしい体験ならね。」
「フハハ、そこまで我が輩を信用しているとはな。さすが調教の甲斐があったというモノだ。」

ネウロは愉快に笑い飛ばし弥子の頭から嘴を離した。

「さあ、暗くなった。それでは行くぞ。」

ネウロは両手を広げ大きな羽に変えると弥子をしっかりと包み込んだ。
ブラインドを二人に掛けて窓からすっかり暗くなった夜の街に飛び出す。
そしてマッハのスピードで大気圏を抜けるとそこは宇宙空間だった。

「我が輩の羽に包まれている限り貴様は苦無く息が出来るはずだ。体の影響も全くない。」

ネウロの言うとおり宇宙空間にいるというのに弥子は無重力の影響も全くなく地上に居るのと同じ環境でいられた。

「ほんとだ・・凄いね。あんたって何でも出来るんだね。」
「魔人様を甘く見すぎだ。」
「褒めてるのに・・。」
「まあよいわ。ところでどうだ?」

弥子は青く光る地球とその上にある月を眺める。

「綺麗。」
「そうだな、とても美しい眺めだ。」
「うん。」
「貴様を月まで飛ばせてやろうかと思ったがウサギも餅もないから止めてこうやって眺めることにしたのだ。」
「そんなおとぎ話いつまでも信じてないってば・・。」

弥子は笑った。
ネウロはそれに答えず鼻歌を歌う。

Fly me to the moon
Let me sing among those stars

Let me see what spring is like
On Jupiter and Mars

In other words, hold my hand
In other words, baby kiss me


fin.
――――――――――――

相互記念で黄昏様より頂きました!

九印が大好きな鳥魔人様のお話ですw
もう最初から最後まで鳥魔人様!
しかも、ネウヤコでラブラブですよ!!
鳥魔人様が口ずさんでいる鼻歌は、エヴァの歌だそうです。
九印はエヴァはよく解んなかったりw

黄昏様、これからも宜しくお願いいたします!

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