製作者の小説
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・・・・・・「それでは次のニュースです・・・に・・容疑・・・男の・・が・・死亡・・・重症を負う・・・・」・・・・・・『サーーーーー』・・・・・・
「う・・・」
テレビの磁気嵐がひどく耳に付く・・・それ以外に音を出すものが無いためだろう。
そして、その音に加わる人の気配。
「ここは・・・?」
男の声、どうやら目が慣れていないようだ。
「俺の部屋・・・か?」
部屋・・・には違いない、だが何か違う。
自分がいる布団の感触、テレビの位置。
長い付き合いの目覚まし時計
それは間違いなく男の部屋のものである。
だけど違う、何がと説明できるものではないが…とにかく、違う。
「なんだ?さむいな。」
男の言うとおり薄ら寒い空気が漂っていた・・・そういった感覚が戻ってくるにつれ部屋の様子が伺えるようになっていた。
「?」
不意にテレビに目をやる、消したはずなのに・・・訝しがる男を余所に磁気嵐は留まる所を知らない。
「うるさいな・・・」
リモコンを探すが見つからない、仕方なく立ち上がりテレビに近づく。
男は何かの物音に気付く、どうやらテレビからだ。
男が気付いた時から音を発し続けていたのはこのテレビだった。
だからいまさら何もおかしい所はないはず。
一つの疑問が浮かぶ、だけどテレビの音が耳障りで、思考が纏まらない。
いつの間にかテレビの前。
その時ぱっと世界が明るくなる光の元はテレビ。
そしてテレビに映る影が男に向かって
「お買い上げありがとうございました、またのご利用をお待ちしております。」
男は目がくらみ、どさっと尻餅をつく。
そして、けたたましい音。
それはいつもの馴染みある目覚ましの音だった。
目を開ける、朝の日差しと鳥の鳴き声。
そして目覚ましの音。
いつも聞いている音・・・そしていつもの朝。
そういつもの朝、男は汗で張り付いたシャツを脱ぎ、シャワーを使う。
これもいつも道理、一つ違ったのはテレビがついている事だけだろうか、男はそれを気に止める風も無く朝食を食べつつニュースを聞き流していた。
ちなみに朝食の内容はパンとコーヒーのみという簡素な物だ。
『それでは次のニュースです』
次々と流れる様々な話題、男は何か既視感のような物を覚えるが、それが何か分からない。
しばし考えるそぶりを見せたかと思うと
「今日は休みだった…」
違う結論が出た。
その時、軽快なチャイムの音が部屋を通り抜ける。
今の時刻は九時前。
こんな時間に訪れる暇人は誰だろうかなどと考えつつしつこく音を鳴らす来訪者を止めに外に出る。
「おっす、おはよう恭二。
お前暇だろ?暇だな!良し、出かけるぞ!」
「おはよう、慎吾。そして拒否する。」
「そんな馬鹿な…!お前なら分かってくれると思ったのに…」
おお、神よ・・・とかなんとか言いながら空を仰いでる馬鹿は間宮慎吾。
いつも芝居がかかったような話し方をする変な奴。
「桜崎恭二君…俺は、俺たちは友達だろう!?」
友達らしい・・・
「知るか馬鹿。」
「ふ・・・。いいのかい、桜崎恭二君?君は重大なミスを犯そうとしているのだ。早くそれに気づくんだ、そして俺と一緒に無上のパラダイスへ、旅たとうじゃないかぁぁぁ!!!」
「そうか、残念だがやはり拒否する。お前がそんな風に誘ってくる時は大概つまらない事につき合わされるに決まってる。」
「No〜〜〜〜〜〜!!!そ〜んなことはあ〜りませ〜んよ〜。いいかナ、シンゴくん?我々はいまからステキな女性に片っ端から声をかけるという崇高なべしっ!」
脳天直撃っ!
その足はどの方向から見ても美しい角度で慎吾、もとい馬鹿の頭に刺さり赤い花を作った。
そう死者への手向けの花束のように。
「決まった・・・完璧な角度だ。起きる事は出来まい。死して屍拾う物なし。成仏しろよ。」
恭二はそのままドアを閉める。
が、玄関先に悶絶死している花瓶をほったらかしにして行くのはご近所さんに何を言われるか、たまったものではない。
「仕方ない。今日は不燃ごみの日ではないが、まぁばらして袋詰めにすれば・・・」
「うぉーい。人を粗大ごみのように扱うなよって!」
「何?そんな上等な物じゃないだろう、お前は。」
「うっさい。とりあえず冗談はさておいてだ。こんな天気のいい日に家に閉じこもってるなんてありえねぇだろ?」
「だまれ。俺はインドア派だ。」
「あぁ〜またそんな素直じゃないこというし。いいから行こうぜ。みんなも来るしさ!たまにはすかっとするような事とかしないと人間腐っちまうぞ。な?」
「・・・何が狙いだ?」
「べっつに〜?ただ引きこもりがちの恭ちゃんにあま〜い夢見させてあげようってゆー老婆心ってやつ?」
「・・・ふん、わかったよ。どうせ暇だったんだ。のってやろうじゃないか。」
「おお!いいね、また一人良き理解者が増えたということだ。
ご協力感謝いたします、一般庶民Aさん♪」
「だれがAさんだ。まさかそんな調子で他の奴らも引っ張って来たんじゃないのか?」