TOV
□穏やかなとき
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「ユーリ…?」
書庫の一番奥、高い位置にある窓から入る光に照らされた椅子に彼は背もたれをまたぐようにして座っていた。
前に回りこんで顔を覗くと切れ長の目は閉じられて静かな寝息をたてていた。
自由時間になり、自分が本を読むために城の書庫に来て探しに行こうとしたら珍しく彼が下町に行かずに暇だから。という理由で着いてきた。
最初は適当に棚から本を取り出しぱらぱらとめくっては難しを繰り返していた彼はそのうちふらりといなくなった。
てっきり下町にいったと思っていたのに、まさかこんな所で寝ているなんて。
「よく寝てます…」
しゃがみこんで彼の顔をじっとみる。
ぐっすりと寝ている彼の姿はなんだか不思議。普段の彼はこんなに深く寝たりしない。
相棒であるラピードといつも神経を尖らせて少しでも気配を察すると飛び起きる。
そんな彼が自分が近づいてもまったく起きる気配がないのは落ち着けて寝ていることに驚き、そしてここまで疲れさせていたのかと心配する。
そっと髪の毛を撫でると少し身じろぎをするが、起きる事はなく穏やかに寝息をたてる。
少し幼くみえるその寝顔にくすりと笑い、そのままそこに座り込む。
絨毯の上はふかふかとしていてなんだか安心する。
座りこんだことにより、少し上にある彼の顔を見上げ、微笑みを浮かべた。
普段気を尖らしている彼がここまでぐっすりと寝ている。
ここは貴方と私しかいません。
「ゆっくり休んでくださいね」
そういい、エステルは手に持っていた本を開いた。