shot
□好き
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「シンク、好きな物。ある?」
彼女はよく僕にそう問いかける。
返事は決まってNOだ。
だって、僕にとってこんな世界はどうでも良いもので。
だから好きなものとか嫌いな物とかどうでもいいのだ。
それをわかっているはずなのに、また彼女は僕に聞いてくる。
「好きな物、あるですか?」
「ない」
腕に持つぬいぐるみをぎゅっと抱きしめながら、彼女は問いかける。
色素の薄い髪の間から覗いた赤い瞳は、期待で輝いていたが、僕の今の返答を聞き一瞬で曇った。
「なんで、ですか」
「じゃあ、あんたこそなんで」
質問されたのを質問で返す。
これじゃあまるであの馬鹿な赤毛のようだ。
頭に浮かんだ奴をぶんぶんと頭を振って中から追い出す。
わざわざ休日にあんな奴思い出したくもない。