うみねこ
□静まり返ったこの島で
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こそこそとした動きとは裏腹に、騒ぎたてながら広い中庭を横切っていく複数の影があった。
「ふぁ…ねみぃー」
「うー…真里亞も…」
「言いだしっぺ二人が何いってんだ!まったくこいつら…」
「まぁまぁ朱志香ちゃん。二人とも子供だから…」
「え!?兄貴!?俺真里亞と同レベル!?」
「だぁー!大声だすなバレんだろ!?」
「うー…朱志香が一番うるさい」
外に出るにはいささかラフな、寝巻きを着たその者達は月明かりに照らされるのをおそれるように聳え立つ木達の陰を進んでいく。
ぎゃいぎゃいと騒ぐ声を掻き消すように、風に吹かれた木が唸りを上げる。それに便乗しさらに声をあげるのかと思えば、彼らは静まり返った。
「……」
「な、何黙ってんだよ?もしかしてビビッてんのか?」
「ばっ!んなわけあるか!ちぃーっと考え事しただけだ!」
「………」
「真里亞ちゃん…たったまま寝ちゃった。」
先ほどより静かになりながらも、彼らは足を進めていく。
時折唸りをあげる木におびえ、暗く見えない段差に足元を掬われながらも進む。
最初に建物から出てきたときより、ぴったりと寄り添いながら。
一番の年長者である青年は、それに気づきながらも黙っていることにした。
なぜなら、同い年の二人はきっとそれを言ったら強がって離れてしまうのだから。