うみねこ

□衝動
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「嘉音くんそこどいてぇぇえええ!!」

いきなり響いたお嬢様の声に、驚いて声のした方を見上げる。と

「お嬢様!?」

階段からお嬢様がふってきた。
反射的に広げた腕の中に飛び込んでき身体を守るように腕に力をこめながらそのまま後ろに倒れこんだ。

「…っ…」

背中の痛みに呻く。と、腕の中でもぞりと動くお嬢様を思い出してすぐさま声をかける。

「大丈夫ですか…?」

「うん…」

少し弱弱しい声に首を少しあげて腕の中にいるお嬢様に目を向けると、顔は見えない。が、見える耳が真っ赤になっていた。

「ひゃ!?」



触りたい。

そう思った瞬間には身体が勝手に動いていた。

背中に添えるようになっていた腕に力を込めて、柔らかいからだを抱きしめた。
天地がひっくりかえったような声を上げたお嬢様はわたわたと抜け出そうと動くが、腕は僕の身体と自分の身体の間に挟まっているので動けない。

暫くの間もぞもぞとなんとか抜け出そうとしていたが、無理だと悟ったのか大人しくなった。
触れる身体がじわじわと熱くなってきている。

見える耳もさっきより真っ赤になってなんだか可愛く感じた。

「か、かのっく…」

上ずった声で名前を呼ばれたが、返事をせずに胸の辺りにある頭に顔を寄せるとふんわりと甘い香りがした。
その匂いが心地よくて背中に回していた手で頭を撫でるとお嬢様がびくっと震える。

ふるふると震える姿を見ていたら、なんだかむしょうに顔を見たくなった。

「お嬢様…顔をあげてください」

「え?」

「あげてください」

「は、はい」

なぜだか敬語で返事をしたお嬢様はおそるおそるという感じで顔を上げた。
あげた顔は、恥ずかしさからかはわからないが真っ赤になって大きな目は少し潤んでいた。

「嘉音くん…?」

照れがまじった声で名前を呼ばれ、僕は自分の中の何かがぶちりときれるのを感じた。


END


 
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