絶望的最終幻想
□‡夜桜‡
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「…サイファーも、な」
なんだか、照れくさい会話をして…照れ隠しにカップに口をつける。
ずっと一緒に居るのに、こんな会話するのは滅多にないからな。
いつもは、こんなコーヒー1杯にも沢山詰まったアンタの優しい温もりにさえ…俺は、気づけないからさ…。
「あ〜。雨、降り出しちまったぜ?」
窓の外に目を向ければ、夜の闇に紛れて確かに無数の雫が空から降り注いでいた。
「…嘘だろ?」
「先人の教えってすげーなー」
「…サイファーのせいだな」
「なんでだよι」
サイファーが優しいからいけないんだ。
こんな寒い日に…美味しいコーヒーなんて煎れるから…。
こんな…なんの取り柄もない俺なのに……ずっとそばにいてくれるから。
翡翠の瞳がいよいよ本降りになりはじめた窓の外を見つめる。
きっと、サイファーの瞳に映るものは…俺に見えるものより、もっとずっと綺麗に見えるんだろうな。
「あ!…おい、スコール!あそこ見てみろよ♪」
「…?」
柔らかく細められていた翡翠の瞳が、急に大きく瞬いたかと思ったら…大きな手が、俺の頭をグイグイとおす。
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