絶望的最終幻想
□‡夜桜‡
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「オラ」
「ああ…」
2つのカップを持って俺のそばにきたサイファーは、当たり前のように片方のカップを俺に差し出した。
温かいカップが、冷えた指先に優しく馴染む。
昼間は春らしく温かくなったが、まだ夜は肌寒い。
冷え性な俺としては、まだまだこの温かさがありがたい。
「おい、スコール」
「…ん?」
「座らないのか?」
「…あぁ」
安全確認は終わったのに、いつまでも窓際で立ち尽くしている俺を不思議に感じたのか…。
サイファーは既に三分の一程飲み干したコーヒーを片手に、近くのソファーを顎で指す。
いつもなら、俺も、それに素直に従ってソファーに身を預けるところだけど…
今日は、もう少しだけ…コーヒーの優しい温もりを感じていたい気分なんだ…。
「…サイファー…コーヒー、ありがとう」
「んあ?…なんだ?急に」
「…いや、何となく」
本当にそう思ってるから…ただ言いたかっただけで…。
いつも、してくれてるけど…俺は『ありがとう』なんて言葉…上手く言えなかったからさ。
「あんま珍しい事すると、天気悪くなるぜ?」
「…悪かったな」
「あ〜、ま、なんだ…お疲れサン」
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