絶望的最終幻想
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北の大空洞が遠くに見えてきた辺りで、クラウドは急に愛車を停めた。
(………なんだ?…何か…変わった)
不格好な山のように見えるクレーターを睨むように見つめ、わけのわからない予感に苛立たし気にフェンリルのエンジンを切る。
(……さっきまで、確かにあそこから呼ばれているような気がしたのに……今は、感じ…ない)
茫然と遠くを見つめるクラウドの耳に、けたたましい電子音が突き刺さる。クラウド自身の携帯の着信音だ。
我にかえって、腰につけたフォルダーから携帯を取り出すと、慣れた手つきで開く。
液晶には、“ヴィンセント”と表示されていた。
「(ヴィンセントか…)…クラウドだ。」
『私だ。……さきほどの件で、リーブから新しい情報が入った。』
「!」
『謎のエネルギーの集結が、突然消えたらしい。引き続き調査はしているようだが……何か見つけられるとは思えんな』
自分が感じた違和感の答えを聞き、クラウドはギュッと拳を握ると、再び遠くの大空洞へと視線を飛ばす。
「(これで終わりとは…思えない)…そうか。…俺も、さっき違和感を感じたところだ。」
『……一度戻って、策を練るほうがよいのではないか?』
同じことを考えているらしいヴィンセントに、戻ることに賛成の旨を伝え通話を切る。
フォルダーに携帯を戻し、フェンリルにもう一度火を入れる。
「……何が起きてるんだ?」
答えが返るはずもないのに、遠くのクレーターに小さく問いかけると、愛車のハンドルを反対へ切る。
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