絶望的最終幻想
□‡サクラチル‡
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3年前…。
スコールは、一度死んだ。
オレの目の前で…。
オレをかばって…。
天使には、真っ白な羽根が生えているんだと思ってた。
だけど…
オレの天使は、真っ赤な羽根を生やして飛び立った。
純粋に綺麗だと思った。
だけど…そんな時まで、綺麗な天使に…
まだ、天国には帰って欲しくなかった。
「っ!!スコールっ!目、開けろっスコールっ!!」
もう、飛び立ってしまった天使には、オレの声は届いてないのはわかってた。
それでも、まだ暖かい体に…諦めがつかな
くて…オレは壊れてしまった細い体を、力いっぱい抱き締めてた。
血の臭いが、確かな“死”を伝えてるのに…。
「スコールっ!っっスコー…っ!っコール!!」
自分の腹からも、死の臭いが漂ってきていた。
それでも、もしかしたらまたスコールが目を開けてくれるんじゃないかと…諦められない気持ちが喉から途切れずに出る。
オレが死ぬのは構わない。
天使を…スコールを、天国にやるのだけは絶対に嫌だった。
「スコール…いこうぜ」
力のない、人形のような体を抱き上げ…ゆっくりと歩き出す。向かうのは、援軍の待つ場所じゃない。
「…桜、見る約束してたもんな」
スコールのものなのか、オレのものなのか区別出来ない血が、オレの足を滑らせては邪魔するが…それでも、ただ遠くに見える薄いピンクを目指す。
きっと、スコールが喜んでもう一度目を開けてくれるはずだ。
「…スコール、着いたぜ?…しかも満開」
大きな桜の幹に背を預けて座り、冷たくなってきたスコールの体を膝に乗せるようにして抱える。
世界で一番大切な奴を抱きしめて、時々風に揺れるピンクの大群を眺めてる今が、とても穏やかで幸せな時間だった。
「これで、お前が笑ってくれたら最高なんだけどな…」
冷たい額に唇を寄せる。
(ああぁ…まだ離れたくねぇな…まだ手放せねぇよ)
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