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□SILENT PASION
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不意にその頭が揺れたかと思うと俯いていた頭が上を向き、相変わらず反応の無いままの寝顔が俺の方を向いた。

見慣れたコイツの見慣れない顔。

普段の意志の強さを如実に表したよぅな瞳も、
開けば少しぶっきらぼうな口調で器用に喋る唇も、
寝ていればどこか少年のような幼さを感じさせる。


こんな風にまじまじと相方の顔を見つめるのはどれくらいぶりだろうか。
肩に置いた手をそのままにぼんやりとそんなことを思っていた。



…もしも俺じゃなかったら。

人前で無防備に寝ることなんて極端に少ないコイツを。

送っているのが俺じゃない他の誰かだったら…
こんな風に声を掛けられても気付かないほど寝入ったりしないのだろうか。

こんな世界で生きていくには向いていないと思うほど
真面目で不器用過ぎる男は、誰より自分に厳しく人に弱さを見せることを嫌う。

普段から相方である俺にすら入り込めない領域があるから。

今こうやって無防備に寝顔を晒しているということに僅かな安堵の気持ちを抱いている自分に気付く。


(そういえばもうずっと長いことこうやって…)


俺は、コイツを、見てきた。


どんな時もシャンと伸ばされた綺麗な姿勢。

だけど、全力で走り続ければ息切れするのも当然のことだ。

役割というには大袈裟だけれど俺にできることはこうやって、隣で彼が何も考えず自然に息を吐きだす場所を与えることくらいなんだろう。

……ただ、それだけ。

それでも、それは俺にしか出来ないことのように感じるこんな瞬間を
本当はかけがえもなく大切に思っていることを
きっと彼は知らない。

知る必要も、ない。




(これは密かな俺だけの…)

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