オハナシ。
□歩幅の違う足跡
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まるで自分に催眠術をかけるように恒例となってきた行為。
こうして本業と関係のない仕事をすることで確実に相方や周りの人間全てを巻き込むことは当然のこと。
それに対して後悔や申し訳ない気持ちがあるというわけでもないが、ただ、おそらく確認しておきたいだけなのだ。
俺が好きなことを好きなようにやっていること。
そして俺のそんな我が儘に付き合って支えてくれている人達がいること。
…どこかで一線を退いておきたい、という気持ち。
あの人がよく好んで被っていたのに似たハンチング帽を少し深めに被り、ようやく慣れ始めた黒縁の眼鏡をかけた自分の姿。
其処に映る年々似てくる人物の姿をした自分と向かい合い、少しだけその名を借りて別の人間になる。
名前を変えて
姿を変えて…
…それでも変わらない俺という人間。
何処へ行っても俺の肩書きは「ますだおかだ」で
俺達の肩書きは「漫才師」。
共に過ごしたこの長い時間のせいなんかじゃなくて
――― 別々の歩幅で。
これからも、必然のように君の隣を歩いていく。
end.