熔けない薔薇

□ボツエピソード(第2章)
2ページ/11ページ


「これ、うさぎから預ったの。よろしくね」

「・・・」


少女はラーメンを食べる箸を置いた。
何も言わずに、渡された紙きれをポケットへしまった。

「ここのラーメンはおいしいわ。次、塩ラーメンの追加をお願いします。」

大食いの少女は上機嫌だった。
もう一人は、そのまま席を立った。

「もう行ってしまうの?薔薇水晶」

「もう、いい」

「そう・・・いってらっしゃい」

大食いの少女は、運ばれてきたラーメンを嬉しそうに受け取った。
薔薇水晶は、そんな雪華綺晶を置いて一人で店を出た。



「で、なんであんたとなのよ。」

黒い衣装を身に纏った少女が、不機嫌そうに腕を組んでいた。

「任務だから・・・仕方がない」

廃墟と化した研究所の前で、水銀燈は文句を言っていた。

「あんたと一緒にいると嫌な気分にさせられるのよね。」

「・・・」

「あいつもいないのに、こんな任務なんかやりたくないわ」

「・・・」

「あんたと雪華綺晶は仲良し姉妹なんでしょう?」

水銀燈は不機嫌そうに言った。

「なんで雪華綺晶に行かせないで、私が行かなきゃいけないのよ」

「・・・」

「ちょっと、あんた黙ってないで何かいったらどうなの?
これだからあんたは嫌なのよ。何考えているのか、全然わかんなぁい。」

「・・・行きましょう」

水銀燈は、薔薇水晶に軽くあしらわれたことが気に入らなかった。
小さな声で「むかつく」と一言つぶやいた。
それでも、薔薇水晶の表情は変わらなかった。


薔薇水晶たちが入った元研究所は、少し前まで火事の現場だった。
原因は詳しく分かっていないが、実験中の火の不始末によるものとされていた。
建物自体はきれいだが、内部は埃と煤で汚れていた。
むき出しになったコンクリートの柱も、所々崩れていた。
二人は組織から借りた鍵を使って、建物内へ侵入した。


小さな懐中電灯を片手に、二人は進んだ。
そして、迷うことなく二階まで辿り着いた。
更に奥へと進むため、廊下を進もうとしたときだった。
天井からわずかな埃が落ちたかと思ったら、コンクリートの破片が落ちてきた。
水銀燈があと一歩でも進んでいたら、当たってしまうところだった。

「な、何なのよ・・・」

薔薇水晶は後ろを振り向いて、遠くを睨んだ。
睨んだ先には、暗闇しかなかった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ