東にある郷里

□迷惑千万避暑地
1ページ/23ページ

葉月の初め。
現実世界と夢幻世界の境にある夢幻館の住人は避暑のため、
普段くるみが警備している湖に来ていた。
「あついわねー・・・」
本当に稀にしか夢幻館に帰って来ない幽香が言った。
「そーですねー・・・」
普段別の場所を守護しているエリーが応答する。
二人(?)が見ているのは吸血鬼なのにジャバジャバ泳ぎ続ける、
謎の美少女くるみ(本人談)を観察していた。
「何不毛な会話してるのよ。」
と、館に勝手に住まう夢月がゴロ寝ツインズに言った。
「泳いで着たらどう?
 弱点を克服したあの子みたいに。」
「誰が貴方達のように水着まで準備して遊びますか・・・。」
ぼそり、と幽香が呟いた。
その呟きを聴いた夢月の口元が歪む。
湖からバシャバシャと音を立てているのが聴こえる。
「花を眺めて昼寝をするのに、避暑はしないのね。
 泳げないから逃げているのね。」
「あら、唯でさえ暑いのにもっと熱くなりたいのね。
 何なら黒く染めてあげましょうか?」
湖からジャバーンと空中三回転捻りで自由落下した音が聴こえる。
「ってことは泳げないことは認めるのね。
 姉さんに教えておくわ。」
「泳げない、とも言ってないわよ。」
くどいがズガバッシャーンとドルフィンジャンプを決めたくるみの波の音が聴こえる。
「本気の勝負がしたいのね。
 良いわ、受けてあげる。」
「ふらふらと立ち上がる、暑さにやられた妖怪に私を倒せるかしら。」
「あのー。」
暑い中、熱さに縁の無い二人が熱くなる空気を一気に冷やす声が掛けられた。
「私も泳いで着て良いですか?」
しかし、これ。
無謀である。
冷やすどころか沈黙の空気になってしまった。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
因みに、湖からは喧しいほどの水の音。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ