熔けない薔薇
□第3章
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「うっ・・・」
「ああ、やっと目覚めましたか。軽い脳震盪のようです。しばらく安静にしていてください」
ベットの横で医師が説明し終えると看護師が尋ねてきた。
「お名前・・・わかりますか」
「・・・わかりません」
次の日、少女は微かに聞こえてくる歌声に目を覚ました。
ゆっくりと起き上がり、歌声のする方向へ顔を向けた。
「あっごめんね。起しちゃった?」
隣のベッドにいた黒髪の少女が振り向いた。
「・・・別に」
不機嫌そうに少女は答えた。
「私ね、めぐっていうの。隣よろしくね。あなたは?」
「・・・知らない」
「そう、分かったら教えて」
笑顔で話すめぐをしばらく見つめた後、少女は言った。
「この部屋、私とあなただけなの?」
「そうよ。同じ病室。どうせ他に空きがなかったからなのだろうけれど・・・ずっと一人だったから嬉しい」
めぐの微笑む姿はどこか儚げで、触れると壊れてしまいそうであった。
「ばっかみたい」
少女にはめぐの表情が眩しい気がして不意に目をそらした。