熔けない薔薇

□ボツエピソード(第2章)
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真夜中の公園のベンチで、二人の男が缶コーヒーを片手に話していた。

「俺は、研究所から情報の在りかを手に入れることはできた。
だが、もう一度は無理だ・・・」

「ええ、分かっていますよ。そこで、何があったんですか」

「人形(ドール)だ。
人形が研究所をめちゃくちゃにしやがったんだ。
顔は分からないが、俺じゃあ無理だった・・・」

「それは、面倒ですね。」


片方の男は、缶コーヒーを一気に飲み干した。
悪態をつきながら、空き缶を地面に叩きつけた。
それでも、あの恐怖の記憶は男から離れようとはしない。
身を震わせて、うずくまった。
男の服の間から白い包帯がほどけて垂れ下がっている。
顔には焼けただれた傷が痛々しく刻まれていた。
もう片方の男は、使い物にならなくなった人形を静かに見ていた。



正午、小さなラーメン店で二人の少女がカウンター席に座っていた。
一人はラーメンをゆっくりと食べていた。
もう一人は、ラーメンを飲むように食べていた。
周りには、空になったラーメンの器が三つ重ねて置かれていた。
それでも、まだ食べている。
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