Harry Potter

□満月の薬
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ホグワーツ図書館。

暗く湿った空気を帯びた室内。
好んでここに留まる者はいないに等しい。
いるとしたら偏屈者。相当の嫌われ者。

−セブルス・スネイプ。
彼はまるでそこに生息しているかのように、毎日そこにいる。

そんな場所にるんるん気分で足を運ぶ者が1人。余りに幸せそうなその表情。
見ている者にも幸せを運ぶようだ。
普段は落ち着いて本を読んでいる、そんな彼。

−リーマス・ルーピン。
リーマスは仄かなランプの灯りに照らされた暗い室内で、セブルスを捜した。
いた。
いつものように1番奥の椅子に腰掛けて本を読むのに没頭している。
どことなく楽しそうだ。
「セ〜ブ〜ル〜ス!」

後ろから肩をたたくと、セブルスがびくぅっと跳ね上がった。
しかし次の瞬間には、本を払いのけて杖を手に、口を開いた。

「ステューピファイ!」
「うわあぁっ!」
「あっ…あれ?ルーピン?」

ジェームズたちのせいで反射的に攻撃してしまったセブルスは、相手が思惑と違ってうろたえた。ルーピンはセブルスに何もしないため、セブルスも悪い気はなかったのだ。

「悪い…、大丈夫か?」
「ん〜どうだろう?まあ、セブルスのだからいいかな」
「そうか、で。何のようだ」
「あ、うん。僕、セブルスのこと、−好きなんだ!」
「ああ、そうか。それで何のようだと聞いている」
「え?」

今度はリーマスがうろたえた。
まさか自分的に勇気を出して言ったひとことがスルーされるとは夢にも思わなかったからだ。

「早く用を言え。僕はお前ほど暇じゃない」
「え、え〜、と、ね。僕は、セブルスが好き、なんだ」
「しつこい、それで、なんだと言っている」

予想外の展開にうなだれるリーマスにセブルスは背を向けて、また本を読み出した。


これって相手すらされてない?


リーマスはがくりと肩を下げ、ゆっくりと後ろを向いて帰ろうとした。

その時だった。

ガタンとけたたましい音を立て、椅子が倒れる。
「セブルス!?」

急いで先程の場所に戻ったら、セブルスが本の下敷きになって呻いていた。

「だっ大丈夫!?」

体を起こしてやろうと手を差し伸べたリーマスに、セブルスが言った。

「お前、さっき、僕に好き、とか、言った…か?」
「え、うん、言ったよ」
起き上がったセブルスは、あたりをきょろきょろと見回しだした。
誰かの姿を見つけようと躍起になっている。

「何してるのさ」
「僕は騙されないぞ。こんな卑怯なやり方で誰が騙されるものか!」
「だ、だから何を言ってるの?騙されるって?」

セブルスはリーマスをぎろっと睨みつけた。

「お前もお前だ!理解してないようだから言ってやるが、どうせポッターやブラックに僕を辱めるような事をしろ、とか言われてのこのこ来たんだろう。僕はそんなバカじゃないぞ、それに好きなんて誰かに命令されて言うものじゃない事ぐらい知ってる!例えそれがとんだ性格の親友だろうとな!」

リーマスは早口でまくしたてたセブルスの言葉を、ゆっくりと理解した。そしてつい笑みをこぼしてしまう。

「−何だ!」
「セブルス、残念なお知らせだけど、僕、ジェームズに命令なんてされてないよ。僕が言った好きは冗談でも何でもない。僕の本心さ」

呆気にとられたセブルスにリーマスはたたみかける。

「セブルス、僕は君が好きだよ。僕と付き合ってください」

あまりの真剣なリーマスの表情に、セブルスはかくんと首を縦にふっていた。
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