Harry Potter

□寄り道はキミのとなり
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『家』にいい思い出はない。
むしろ、悪い思い出すらないといえる。
家族とか、自分にはあってないものだ。

ため息が知らず零れた。


「あれ、お前なにしてんの?」


本棚の影から躊躇いというものを知らない子供の声がした。

「何って、見てわからないか?本当にバカになったんだな、ブラック」
「なんだと?オレはお前が一人寂しくため息なんてついてるから、わざわざ心配して声をかけてやったのに!」
「心配?変なところを強調するな!そうやってまた何かしてくる気だろう」
「分かってるならさっさと傘貸せ!」
「威張って言うことか?貸してください、だ」

2人の言い争いは止むことがない。
いつもは落ち着いたセブルスも、シリウス相手だと敵意むき出しで反感する。
犬猿の仲とはこういうことだろう。

「ふん、こんなことしてるぐらいなら僕は帰る。貴様はせいぜい僕の後ろでずぶ濡れにでもなるといい」
「何だと!?」

昇降口はガランとしていて、人気すらない。
図書室から言い争いの絶えない2人は、、傘の取り合いをしながら強く降る雨の中に飛び込んだ。

2人分もスペースのない傘は、シリウスとセブルスの間を行ったり来たりしている。

「返せ、それは僕のだっ!」
「なっ…オレが雨に濡れるだろうが!」
「貴様が濡れたところで僕に関係あるものか。それより、僕が風邪をひいたらどうする」
「オレだって風邪ひくだろ」
「は、安心しろ。バカは風邪をひかない」

雨の中の言い合いは、2人を冷たく濡らすばかりだ。
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