短編小説
□代打みっちぇる
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瀬南から、突然電話があった。
しかも夜中に。
「はーい、ミッチェルです。」
―あ、ベン?遅くにごめんね、ちょっと頼みたい事が…うっ。
消え入りそうな瀬南の声に、
微かに聞こえる呻き声。
「どーしたんだよ、声消え入りそうじゃん。」
―明日、暇?
「暇だけど……どうしたの?」
―明日、スパイダーマンっぽい目出し帽持ってジャージで、△△駅に行ってくれない?
「え?」
―明日、ロケなんだけど出れな……くっ。
電話の向こうからカラカラと言う音とその後に水の音。
「瀬南?」
―取り敢えず宜しくね、明日…痛い痛い痛い。
「は、大丈夫?瀬南?」
電話は空しくツーと鳴る。