遙か3小説

□涙のわけ
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「おぃ、譲〜」

扉を開けた向こうには

「ぇ…」

静かに涙を流している恋人がいた。


―涙のわけ―


ちょっとの口喧嘩や、ましてや怨霊との勝負、
刀の傷を負っても涙を流さないような目の前の恋人―譲―が…泣いている?
近づいて顔を覗き込むとやっぱりそれは見間違えではない液体で…
見られてることに不快感を感じたのか、眉をひそめた相手が口を開いた。


「な、に…?」

「何じゃない…どーしたんだ?」

「兄さん?何を言ってるんだ?」


涙を流している癖に…声色はいつもより強め。


「あ?お前泣いてるんじゃ…」

「…コレだよ、コレ…」


そう言って目の前に突き出されたのは…市販の目薬。
相手の顔と目薬を何度も見返す。
俺のキョトン顔に、はぁ。とため息をつき、


「まさか…俺が泣いてるとでも?」

「…あぁ…」

「そぅ…」


涙と間違えていた液体を指で掬う。
その手で譲の頭を撫でるとくすぐったそうに肩をすくめる。
相手の反応をを見て顔が綻んだ。
眼鏡を掛けようとする動作をとめ、眼鏡を奪う。


「心配した…」


一つ下の弟。
でもそれ以上に大切な存在。
体制をかがめ、視線を合わせる。
軽く口付け、大事に抱きしめた。
おずおずと腕を背中に回してくる。


「俺は、そんなに弱くないよ…」

「そ、うか…」


もう一度口付けた時の涙がしょっぱかったのは、黙っておこう。
なんせ、プライドが高い奴だからな…。


「俺の前だけなら、弱みを見せてもいいんだがな」

「ふふ…考えておくよ」


そう微笑んだ表情は安心感を伴っていたように感じた。
大切な恋人。かけがえのないの弟。
離したくない存在なんだ。

だから…俺だけを頼ってくれよな?
頼りない兄さんかもしれないけど、お前のことを一番に想ってるんだ。


Fin...
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