秋の空はとことん広くて真っ青だ。
だだっ広い原っぱに寝転んで見上げると、吸い込まれていくような錯覚をした。
「タミヤくん見ーっけ」
声のした方に視線を向けてみると、風にゆらめく長い黒髪を押さえながらにこやかな名無しがそこに立っていた。
ひらり、と捲れ上がるスカート。
「……水玉」
「あっ」
名無しは慌ててスカートを押さえて俺のことを軽く睨みつけた。風が強い所為でマリリン・モンローみたいだ。
「…スケベ」
「そこに立ったお前が悪い」
のっそりと起き上がって、髪の毛に付いた細かい葉をぐしゃぐしゃとはたく。背中に付いた屑は名無しが払ってくれた。
「で、どうかしたのか?」
「別にぃ…暇だったから」
「あっそ」
名無しは俺の隣に座ると、ふぅ、と溜め息を吐いた。愁いを孕んだ横顔がやけに大人びて見えて、少しだけときめく。
そっと手を握ったら、驚いた様子だったけれど受け入れてくれた。握り返される手が、熱くなっていく。
「もう冬になるね」
「ああ、そうだな」
「さっき焼芋屋さん見掛けたよ」
「…よし、買いに行くか」
お互いに照れ隠しみたいな所があるのだろうが、そんな風に考えてしまうのも少し恥ずかしくなって、競争だ!と言って名無しを残して走り出してしまった。
初空
( タミヤくん、美味しいね )
( ……ん )
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中学生らしいのが書きたくて20091028