B O O K
□それがきっと世界の幸せ
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私は恋をした。
けれどそれは余りにも不毛で、成就する事なんて夢のまた夢。
鏡を覗いて、床に叩き付ける。
「そんなに僕が好き?」
ジャイボの声はまだ変声期を迎える一歩手前、高くてよく通る。その声で名前を呼ばれると嬉しくて、胸がときめいた。
「なんでそんな、」
「顔に書いてる」
「なにが」
「好きだ≠チて」
思わず頬を手で隠すと、ジャイボは悪戯っぽくやっぱり、なんて言って笑った。
頭にきたけれど、彼の笑顔を近くで見れて嬉しかった。
「でも僕、名無しとセックスは出来ないよ」
「……」
「ゼラが好きだから」
別の人に向けられた好き≠ニいう特別な感情。胸の心地よいもやもやが変色する。
前に一度だけ、こっそりと一人で秘密基地に来た事があった。
それはただ単に忘れ物があったのに気が付いたからだった。
その時にゼラとジャイボがキスをするところを見た。それは徐々に激しくなって、怖くなった私は忘れ物なんてどうでもよくなり、逃げ出した。
男の子同士という事にも驚いたし、何より好きな人のそんな現場見たくない。
(本気だったのか)
妙に冷静にそんな事を考えている私をよそに、彼はまた口を開く。
「僕を殺しちゃえば?」
時が止まる。
そんな事実際にはないのだけれど、私の中の時間は確実にぴたりと止まっていた。
殺す?ジャイボを、私が
「そうすれば僕は君のもの。ゼラじゃなくて、名無しだけの僕になるんだ」
「そんなの怖いわ、」
「名無しは臆病だね」
愛に勝るものはこの世に存在しないのだと、ジャイボは私にそう諭した。
「一人が嫌なら僕を殺して自分を殺すのも良い。天国で会える」
声変りしてない彼の声で言われる現実味を帯びない台詞達に脳が麻痺する。
Why don't you die with me?
私は恋をした。
そして今、ハサミを構えた。
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久しぶりに小説かく…
狂愛ですけどもね。
何気に狂愛好きです
お題:9円ラフォーレ
20081101