B O O K
□黄昏を迎えに
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家族が生きていくには、これが必要だったの。彼女の泣きそうな顔を見て、僕は何も言えなかった。
「カネダ……?」
蹲る彼女の背中を見つけて、僕は頭の中で色々なイメージを繰り返しながら彼女の隣に座り込んだ。
心臓が耳元にあるみたいに、バクバクと激しい鼓動が聞こえる。
それは隣の彼女にも聞こえてしまいそうで、僕はますます緊張した。
「なにか、あったの?」
「え、」
「僕で良かったら話、聞くよ?」
ポケットからハンカチを取り出す。しわを指で直して、手渡した。
彼女は、受けとらない。
「名無しちゃん?」
「私に、優しくしないで」
「…え?」
「私、もうカネダとこんな風に喋っちゃいけないの!」
話を聞いて、僕は愕然とした。けれどそれを顔に出してはいけないことは、はっきりと分かった。
彼女は売春をしたと僕に言った。貧乏な家庭の為に、幼い弟の為に、と。
大粒の涙が次々と溢れては落ち、堅く握られた拳の上に消えた。
「汚いの、私…だから」
言葉が出なかった。
気の利いた言葉もなければ、彼女を安心させられるような言葉も、僕の脳内では構成されない。
「名無しちゃん…」
僕が守ってあげるから、泣かないでよ。
それは飲み下され、胃液に溶ける。彼女に届くことはなかった。
(それを言えたら、)
(君は笑ってくれるの?)
・・・・・・・・・・
な ん だ こ れ 。
相変わらず駄文ですね←
title:胎孕
20080812