B O O K

□君の誤算僕の策略
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計算が得意なお前の唯一の誤算、それは俺の行動力と、積極性だ。


名無しはデンタクに借りた何やら小難しそうな本を読んでいた。
覗き込むと、文字ばかりが羅列していて、目が回りそうだった。

「何の本?それ」
「んん?」

薄暗い秘密基地で読んでいた所為か、内容の所為なのか、名無しの目は少し涙ぐみ赤くなっている。
本の表紙をコチラに向けて、得意気に「“天体について”」と言った。

「天体?」
「星の本」
「ふーん…楽しい?」
「うん、楽しいよ」

名無しはハラハラと本のページをめくり、写真を見せた。一面黒に点々と白いのが付いた写真。

「綺麗でしょ」
「そうだな」

黒い画用紙に白の絵の具が飛んだみたい、なんて名無しの笑顔をみたら言えるはずがなかった。

「でも一番綺麗なのはさぁ」
「うん?」
「名無しだよな」

言った後にクサイと思ったが、後悔先に立たず。名無しの顔が真っ赤になって、口をパクパクさせていた。
居心地が悪くなり本を取り上げて、名無しの小刻みに震えた唇を自分の唇で押さえた。

「―…出来心、です」
「さいてー」

名無しは俺の笑顔を褒めてくれる。だから、笑ったら許される気がして笑ってみた。

「ごめん、」
「それ、笑って言う事じゃないから」



計算が得意なお前の唯一の誤算、それは俺の行動力と、積極性だ。
怒られたのは俺の誤算でもあるけど。



君の誤算僕の策略



(なぁ、もう一回良い?)
(まだ許してないんだけど)




・・・・・・・・・・


キスネタ好きな
奏さんでした。

20080421



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