B O O K

□王子様
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恋に敗れた。
初めての、大切な恋だった。

『無理』

彼にとっては簡単な、
私にとっては重大な、
一言だった。

『だって君、遊んでるんでしょ?』

少し軽蔑の混じった彼の笑いが、胸の奥深くに突き刺さって私をおとした。



「、」

ふと頭を撫でられる。
顔を上げると、微笑む雷蔵がいた。三角座りの私の隣にしゃがみ込んでいる。

「どうしたの?」

泣かないで、雷蔵の優しい声が私の真ん中の傷跡を擦ってくれているようで、涙がますます溢れた。
秘密基地は静かだった。
私の情けない声が妙に響いて、切なさが増した気がした。


「私、遊んでなんかないもん」
「うん、」

「まだキスもした事ないのに」
「うん、」

「あんな人だと思わなかった」
「うん、」

「でも…好きだったの」
「うん、」

「王子様だった」
 
全て吐き出すと少しだけスッキリして、涙はひっこむ。目の下にくっついた涙は、雷蔵の親指が払ってくれた。
雷蔵はポケットからハンカチを出して、私に差し出した。

「名無しの事泣かす男なんて許せない」
「良いの。私にも、きっと悪い所あったんだよ」
「でも…」

私が笑うと、腑に落ちないようだったが雷蔵もぎこちなく笑った。

「―私だったら、名無しの事絶対に泣かせないのになあ」
「えっ?」

雷蔵に借りたハンカチを手の中で動かしている中、ふいに言われた言葉に間抜けな声が出る。

「つまり」

雷蔵の声がハッキリと、秘密基地に響く。

「私が名無しの王子様になるの」


恋の傷を癒すのは新しい恋を、とはよく聞きますが、私は彼のお姫様にふさわしいでしょうか。


こんにちわ私の王子様



(私が王子様じゃ駄目?)
(それじゃ意味ないじゃない)







・・・・・・


何だこれ(#^ω^)
頑張ったんだけど´`

20080402



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