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◎もしもセドルが小さくなったら


朝、いつも通りに起きて、くそだりーけど、仕事の前に身支度を整えっかなと、ベッドから飛び降りた。

「うおっ!?」

いつもはすぐに床に足が着くはずなのに、今日はえらくがくんと体が下に下がって床に足が着くまで時間がかかった。しかも、今のガキみてぇな声、なに?つーか、オイラの部屋のもんってこんなでかかったっけ?と疑問符が浮かぶ。ベッドの高さがオイラの目線よりちょっとでかいし、部屋にある全部のものを見上げてるし…何だこれ。自分に何が起きているのか把握出来ず、思考停止する。その時ガチャリとドアが開き、ひょこりと顔を覗かせたオイラの部下兼恋人。


「しぶちょー、何時まで寝てるんですか!支部長が来ないと仕事片付かないんです…け……ど………」


見下ろされた視線がオイラと目が合った。瞬間、驚愕の色に染まった瞳を最大限にまん丸く見開いた。


「…し、支部長の…隠し子?」

「はあっ!?」

「え、まじ?これ…私聞いてないよ、まあ言うわけないか。私どうしたらいいんだろ、お、落ち着け私!…ねえ、ボク、お父さんは?どこ行ったのかなあ?」

「お前ボクって誰に言ってんだよ!オイラに隠し子なんているわけねーだろ!」

「え?もうそんな言葉使いしてるの?ダメだよ、お父さんみたいになっちゃ」

「ふざけてんのかよ!オイラはオイラだろーが!お父さんって何だよ」


ふざけてるのか、全く話が通じず、苛つきから地団駄を踏む。すると、眉間に皺を寄せて肩を掴まれる。


「…えーあの…まさか…せ、セドル支部長?」

「他に誰がいるってんだよ!お前ふざけんのもいい加減にしろよ!」

「ちょ、ちょっとこっちきましょーか」


洗面所のドアを開け手招きされ、不審に思いつつも近づいていく。いつもより進み具合が悪い。何でだ。つーか、何でこいつに見下ろされてんだ。


「ちょっと我慢して下さいね」

「はー?って、ちょ、何だよ!」


あろう事か両脇を抱えられ、いわゆる抱っこされた形に。はっ、はあっ!?こいつオイラを軽々と…



「てめっ、何すんだよ!いきなり!」

「支部長、支部長…鏡に映る自分の姿を見て下さい」

「鏡ィ?……………はあああああっ!?」

鏡に映る自分の姿に絶叫。両脇を抱えられて映る自分の姿、それは見事に縮んだ自分の姿。つーか、ガキの頃の自分。

「何だよこれェェェッ!?何でんなことになってんだよ!!」

「あ、やっぱり支部長だ。それは私が聞きたいです」
「意味わっかんねーし!」

「とりあえず落ち着きましょう。よしよし、ペロキャンあげるから落ち着こうねー」

「ガキ扱いすんな!落ち着いてられっかよ!つーか、降ろせ!!」

「えー、どうしよっかな〜」

「降 ろ せ !」

「はいはい、分かりましたよ。なんてゆうか…今の姿だと、怒っても可愛いですね」

「かっ…いいや、仕返しはオイラがもとに戻った暁に後悔するほどしてやっからな!それより、どーすりゃ戻んだよ、これ」

「…知りませんよ、支部長が知らないことを私が知ってるとでも?」

「何だよこれ…こんなんじゃ今日仕事になんねーよ」

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朝、支部長が時間通りに来ないのはいつものこと。また寝坊かと思って部屋を覗きに行ったらそこに居たのは、それはそれは可愛らしいセドル支部長そっくりの小さな男の子だった。あまりにそっくりすぎて、最初は支部長の隠し子かと思った。でも、見ているうちに行動や言葉使いとか怒った時の雰囲気とか、まんま支部長だと言うことに気付き、何らかの原因で支部長が小さくなったんだと悟った。セドル支部長はまだ自分の現状を把握出来ていないようで、とりあえず現状把握してもらった。
セドル支部長が自分の姿を見たときのテンパり具合といったらもう…それから程なくして落ち着きを取り戻し、小さい姿でうろちょろ行ったり来たりする支部長。いつもならドタドタとうるさいのに、今は小さいからすごく可愛い。ヤバイ、まじで可愛い。もう萌えだよ、萌え!行動1つ1つが可愛いくて可愛いくて…きゅんきゅんして死にそう。怒るから口には出さないけど。


「口から出てなくても態度に出てんだよ!その緩んだにやけ面やめろってーの」

「え?私そんな顔してます?」

「してんだよ!」


ぴょんっとジャンプしたかと思うと、目の前に小さい支部長。バシィ!とチョップされた頭は痛かった。どうやら腕力は元の大きさとさほど変わりないらしい。

「いった!?」

「オイラがこんなに悩んでんだぞ!真面目に考えろよ!」

「だからってチョップする意味ありました?分かりましたよ、一緒に考えます」

うーん、と頭を捻る。急に閃いたかのようにぴょんっとベッドから飛び降りた支部長。どうしたのかと見ていれば真っ直ぐドアに向かっていく。ドアノブに手が届かずにぴょんぴょん跳ねる支部長。可愛すぎて鼻血がでそう。てゆうか、顔がにやけてヤバイ。緩みっぱなし。最終的に私の方にてくてく歩いてきた支部長は私を見上げてこういった。

「…ドア届かねーんだよ!開けろよ!」


小さい支部長の姿や行動は私の中の嗜虐心?加虐心?を刺激してしまうようで、私はつい意地悪したくなった。

「開けろ?あれ〜?人に頼むときは何ていうのかなぁ?」

「ふざけんなよ!オイラ分かったんだよ、小さくなった原因が!今からそこに行きてーから開けろって言ってんだよ!」

「そんな言葉使いする人は知りませーん」


ちらり、と様子を伺うとわなわなと震えている支部長。元に戻った時のことを考えると怖いけど、怒りに震える小さい支部長は可愛くて可愛くて。


「分かった、分かりました!開けます、開けますよ」

ドアを開けると走っていく支部長の後ろを着いていく。きっと全力なんだろうけど、子供の体な分全く進んでいない。しかもスタミナ切れも早い。50メートル進んだ所でへばった支部長。

「どこ行きたいんです?」

「食材保管庫!」

「私が連れて行きますよ、はい、おんぶ」

「しねーよ!てめぇっ、いい加減にしろよ!」

「はは、言っただけですって」


食材保管庫の扉を開けると、セドル支部長はある食材の元へ一直線に走っていく。支部長の後ろを追っていくとそこには明日第5支部へ出荷予定の多量の葡萄の房。


「ん?これって…ちゃんと調理しないと食べた数だけ体が変化するっていう葡萄ですよね?確か特殊調理食材…まさか」

「そういえば昨日オイラこれ摘んだわ、三粒くらい」

「それじゃないですか、原因!自業自得なのにこんな大騒ぎして…ほんとしっかりして下さいよね〜」


やれやれと肩を竦めていれば葡萄を歳の分だけ食べたらしい支部長が元のサイズに戻っていた。


「っあー!鬱陶しかった!元の体はやっぱサイコーだな!」


なんて言いながら屈伸している。私はあの可愛い支部長じゃなくなって肩を落とす。


「あー…戻っちゃいましたね」


残念そうに呟いたら、一気に距離を詰められて壁に押し付けられる。あれ、これは些か不味い気が…。


「今日は随分世話になったなァ?」

「世話なんて…し、支部長戻ったなら仕事しましょうか、支部長居ないと支部が回らないので…ね?」

「仕事の前にやらなきゃならねー重要な仕事があんだよ」


ギラリと鈍く光支部長の目と、これでもかというくらい嗜虐的な笑みをたっぷり含んだ表情に射ぬかれ冷や汗が伝う。


「し、仕事よりも、重要なことって…?あ、ああ!この葡萄の注意点?摘み食い危険的な?」

「分かってるくせに、すっとぼけんなよなァ?お前に仕返しっつー名目のお仕置き、しねぇとな?手加減抜きの性的な意味での、な」

「ごめんなさいもうしませんって…ーっ!!」


元に戻った途端に君は


(しばらく仕事出来ない…)(オイラ直々のお仕置きはどうだったよ?)
(…もう支部長は小さくなるのやめて下さい)



戻った途端に小さくなっていた時に蓄まったドSを発揮したんでしょうね。因みに葡萄を三粒食べてるのでセドルは三歳の姿になってました。

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