お前の青春、俺がもらった

□きになるあのこと追い駈けっこ
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キーンコーンカーンコーン

「終わったー!おっ昼だーい!」

「名無し、お弁当作ってきたの?」

「うん!まだ余裕があるから作ってきたよ〜でもジュース買ってくる!」

「うちも行くしー」



通常の学校生活が始まって3日。授業はやっぱり眠くなる。待ちに待った昼休み、ジュースを買いにリンと話ながら食堂に向かう。




「うーん、何にしようかな…」

「名無し早くしろしー」

「ちょっと待って!いちごオレも飲みたいけどウーロン茶もすてがたい」

「どっちでもいーしー」

「でも今日はお弁当焼きそばだし…よし、決めた!ウーロン茶にしよーっと」



ウーロン茶を買い一口飲んでると、急に女の子たちがきゃーきゃー言いだした。なんだろう、そう思って女の子たちの視線の方を向く。あ、この前のバス停で堂々とキスしてた人だ…すごいモテるんだなあ…あ、私が入学式にぶつかった人もいる。早く教室戻ってお弁当食べよう。リン行こー、と声を掛けようと振り向いても、リンがいない。あれ、うそ!置いていかれた?私が振り向いたのとタイミングがいいのか、悪いのか…丁度あの先輩もこっちを向いていた。この前と同じようにパチリ、と合う視線。もちろん私は顔ごとおもいっきり反らす。やってしまってから顕らかすぎると後悔。


もう早く教室戻ろう。ウーロン茶で顔を隠すようにして(全く意味ないけど)、食堂からでる。食堂を出て安堵の一息。ふう、しばらく食堂来るのやめようかな。なんて思っていたのもつかの間、背後から低い声で呼び止められる。






「おい、そこの1年女子」



びくり、と揺れる身体。女子は私意外にもいたから私じゃないと思い、歩くことを続行。



「シカトしてんじゃねーよ、ウーロン茶持ってる1年女子、お前のことだ」



う、ウーロン茶持ってる女子って…私しかいない!な、なんで!?機械のような動きで振り向くと、そこにはやっぱり金髪の先輩が立っていた。





「…なな、何ですか?」



ずんずん近づいてくる金髪の先輩(もうすっごく怖い!)に半泣きになりながら返事をする。わあ!私が入学式の時にぶつかった先輩まで一緒に来た!こ、これは私呼び出しってやつですか??



「バリーこいつか?お前ぶつかった女子って」

「あーこいつっぽいな」

「よーく見れば可愛い顔してんじゃねーか。この前人がキスしてんの見て盛大に吹き出して言った奴とは思えねーな」

「…すいません、でした」

「あ?別に怒ってねーよ」

「あれはびっくりして思わず…あんなところで堂々とあんなことしてるなんて思ってもないので…」

「は、あんぐらい普通だろ?ああ、お前経験なさそうだもんなあ?…で、お前名前は?」

「へ?いきなり私の…名前ですか?」

「お前以外に誰がいんだよ」



名前言ったら何されるか!全部調べ上げられお金盗られ挙げ句、ぼっこぼこに殴られ蹴られなんてことに…さらには、あーんなことやこーんなことまでされかねないんじゃっ…!!




「めめめ、滅相もございません!私なんて名乗るほどのものじゃないので!っ、入学式はぶつかってすいませんでした!この前お楽しみを邪魔しちゃってごめんなさい!それじゃあ、失礼しますっ!」



すごい勢いと速さで謝り、頭を下げ、身体をぐるん!と反転。瞬間、ダッシュ!!



「あっ!逃げんなよ!!」

「だから言ったじゃねーか、逃げ足速えーってよー」

「うるせーな、バリー!」

「気ー抜くなって言ったじゃねーか」


「黙れ、デブ!!」



後ろをちらり、と見ると先輩たちが言い争っていた、かと思うと……ええっ!?嘘ーっ!?追い掛けて来てる!ま、撒かなきゃ!周りが見えなくなる程一生懸命走る。





「…あの女、本当に足速いな」

「言ったじゃねーか!」

「ちっ!あーっ、面倒くせぇ!!」

「あ?あれセドルじゃねーか!?」

「いいところに遅刻してきたじゃねーか!おいっ、セドル!!」


「…はあっ、はあっ……今度は…なっ、何?」



目の前を見ると、私の方向に歩いて来る黒髪の奇抜な格好をした人。セドル、そう呼ばれダルそうに顔をあげる。




「なんだよ、ボギー、オイラちょっと前に起きたばっかなんだぜー」

「お前の起床時間なんてどーでもいいんだよ!それよりも今走ってる女いんだろ!」

「ーっ!!?」


金髪の人の声が背後から響く。それってもしかして私のこと!?



「あー?いるな、いるいる!それがどーしたんだよー?」

「そいつ、捕まえろ!」

「はあー?なんで?」

「その女、バリーにぶつかった女だ!」

「え、まじで?だから追い掛けてんのかー。つか、もしかして逃がしたのー?ヒャヒャ、だっせぇ!」

「うるせえ!」

「あーあー、わーったよ、捕まえればいいんだろ〜」


瞬間、両手を広げて行き場を制止するセドルという人。階段はその人の後ろに行かなきゃないし、今から方向転換したら確実に金髪の先輩と巨漢先輩に捕まる。なんで?なんで!?なんで私こんなことになってるの!てゆうか私どうしよう?




「そこの女子ー、おとなしくオイラの胸に飛び込んで来いよ〜」

「ーっ!!」



距離がどんどん縮まる。このままじゃ本当に掴まっちゃう!どうしよう!



「つーかまえー…っぶ!?」


どうしよう!そう思って目をつぶってあとは流れに任せた。すると、ゴツ!という鈍い音と、ウーロン茶を持っていた右手に重い感覚。よりによってその持っていたペットボトルが待ち構えていたセドルという人の顎にクリティカルヒットしてしまったらしい。うわーん!またやっちゃった!?私って学習能力ない。でも今は逃げるのが先!と、いうことで、




「ごっ、ごめんなさい!!」


一言叫び、蹲り顎を押さえるセドルという人を通りすぎ階段を駆け上がる。




「はあ、はあっ…疲れた…もうなんで??」



半泣きになりながら教室に戻り息を整える。とりあえず明日が休みでよかった。放課後もホームルームが終わり、あの先輩たちに待ち伏せされる前に即帰宅。月曜日、学校来るのが嫌だなあ…。





きになるあのこと追い駈けっこ




(私の平凡が徐々に失われていくことは拒否したい)




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