□憎まれ口が喧嘩の合図
1ページ/1ページ




「名無しーっ!」





バスケ部の朝練が終わり、片付けをしてシャワーを浴びて、同じ2年の(何組か忘れたけど)女の子たちから貰ったアイスを食べながら教室に入った瞬間、でかい声で名前を呼ばれる。朝からテンション高すぎじゃね?




「朝からうるさいくらい元気だねー、あんたは」

「まーな!それよりよく聞け、名無し!」

「なにを?」

「オイラ彼女できた!」

「…は?ついに日本語まで喋れなくなった?」



思わず、手に持っていたアイスを落としてしまった。べちゃっ!と音を立てて砕けたソーダアイス。あー、勿体ない!せっかく頂いたものなのに!



「うわっ、汚ねーな!ばっか、お前、日本語喋ってるだろ!理解しろよー!」

「え?まじ?」

「まじだって!何だ?オイラに彼女が出来て寂しいの?あ、悔しい?独り身の名無しちゃん」

「…誰が寂しいかっつーの!自惚れも大概にしてよね。ほんとバカと話すと疲れる〜」

「はー?何だとテメー!」


席についてもしつこく絡んでくるバカにイラッときたあたしは、うるさいバカと言ってタオルを顔面にぶん投げる。




「ぶっ!何すんだよ!!」

「一応聞いとくけど、彼女って誰なの〜?」

「聞いて驚け!」

「いーから早く言えっつの」

「B組の愛ちゃんだぜー、いいだろ、羨ましいだろ〜?」

「げっ、可愛い子じゃん!待って待って、それセドルの妄想じゃないよね?」

「妄想なわけねーだろ!何だそれ、お前オイラをどんな目でみてるわけー?」

「だってあんな可愛い子があんたの彼女なんて…可哀想、勿体ない」

「それどういう意味だよ。告ってきたのは愛ちゃんだぞ。分かる子にはオイラの魅力が分かるんだな」

「ぷ、あははー。笑えなーい」





とは、笑って言ったもののなんだか胸がチクッとした感じがしたのはなんで?…風邪?授業が始まり全く関係のないページを開きながらふと考えた。すると授業中とか関係なしに能天気に話しかけてくる隣のバカ。まあ、あたしの席の周りはほとんど真面目に授業受けてないけどさ。ボギーなんて堂々と携帯だしてカチカチカチカチ。ユーは目あけて寝てるな、あれ。ちなみに隣のバカに至ってはボロッボロになった教科書にさらに目玉とかの落書きをしている。気持ち悪いよねー




「なー、名無し今日昼飯なに食うのー?」

「あたしはー、何にしよっかな〜、学食のカレーうどんかA定食」

「なにお前、今日学食かよ」

「え?だめ?別にセドルに関係ないじゃん、だってあんた愛ちゃんと一緒に食べるんでしょ」

「まあなー、なになに?羨ましいかー?あっ、寂しいんだろ!ヒャハ!」

「はあ?誰が。あたしはボギーとユーと食べるから別に寂しくないし!」

「あー?お前1人で食べろよ!」

「何で!?意味分かんなっ!」

「ダメだ!1人で食べろ!」

「愛ちゃんと食べるセドルには関係ないじゃん!」

「大有りだ!」

「だから、何でよ!?」

「何でも、だっ!」



バシッ!といい音を立てたのはセドルのぼろっぼろの教科書。が、名無しにクリーンヒットした音。
瞬間、ガターン!っと立ち上がる名無し(授業中である)。ヒットした教科書をセドルに向かって投げつける。




「だっから、意味わかんないって!てゆうか痛いでしょーが!」

「いって!教科書の角投げつける奴いるか普通!昼飯は絶対1人で食え!1人で食って惨めさを体感してろ!」

「はああ!?意味わかんないし!あんたみたいな色惚け野郎なんかさっさと振られてしまえ!」

「ああ!?なんだとコラ!んなこと言ってるから男が寄り付かねーんだよ!ヒャハハ、ざまみろ!」

「ぐああーっ!むっかつく!!!変態フェチに言われたくないっつーの!」








憎まれ口が喧嘩の合図




その後、秒と待たずに怒りに奮えた力加減全くなしの名無しのビンタがセドルの左頬に思い切り入る。バッチィィィィン!という乾いた音が授業中の教室に響き、黒板に字を書いていた先生の手が止まる。
そしてやっぱりやられたままでセドルがいるわけもなく、名無しの右頬にグーパンが思い切り入ったのも言うまでもない。よろけた名無しは後ろの席のボギーへとぶつかり、ボギーまで間接的に被害を伴った。

掴み合って喧嘩しだした2人をとりあえずボギーとユーが羽交い締めして取り押さえるが押さえ切れず、結局駆け付けたクロマド先生によって、2人して拳骨を連発で食らい制裁完了。保健室に直行し、2人して頬を冷やすことになる。




(だってなんかすごくムカついた。わかんないけど、どうしてだろ?)






.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ