お前の青春、俺がもらった

□ありったけの抵抗をするから
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名無し、おま、確実にあのキモいつくしくねぇ連中に目つけられたんじゃね?オレは知らねぇけどな、ってサニー君に言われたのが土曜日。さらにサニー君情報によると、ペットボトルが思い切り顎にヒットしてしまったあの先輩がめちゃめちゃキレてたらしい。あんなキモい悪趣味目玉野郎に目つけられるとか最悪じゃね?てか御愁傷様ー、とも言われた。それを聞いた私はもちろん腹痛に見舞われて、もう怖くて学校行く気がしない。なんとかならないものか、と考えても土日で顔や声を変えるわけにはいくはずもなく…、






「……うあーっ…どうしよう!学校行きたくないっ!お腹痛い!休みたい!!」



ーと、こんな状態で月曜日を迎えてしまったというわけであります。全然眠れなかったし、腹痛が酷すぎて食欲ないし、体調は絶不調。でも、何だかんだで休む程じゃないから重い足取りで学校に向かう。はあ…憂鬱。学校までの道のりも校内に入ってからもやたらキョロキョロして落ち着きない私(過敏になり過ぎて)。すれ違う人に不審な目で見られるし…





「疲れた〜。食欲なくて全然お昼ご飯食べれなかったし…次の体育めんどくさい〜あんまり教室から出たくない」

「もー仕方ないことだし!早く行かなきゃチャイムなるし…てゆうか顔色悪いけど大丈夫?」

「大丈夫じゃないけど大丈夫…。身体動かせばスッキリするし」

「なんだしそれー。あんまり無理しないでよ〜?」

「うん、リンありがとう」




五時限目の開始を伝える本鈴がなり、担任のマンサム先生が担当の体育が始まる。テンションが高すぎて私にはついていけそうもないなぁ…なんて思いながら準備体操や柔軟体操をする。



「今日の授業はクラスの絆と団結力を高めるためにドッジボールだ!男女とか関係ないからな!男女混合で全力でやるぞ!」



体調不調のときに限ってドッジボール。しかも男女混合だなんて…マンサム先生はなんて熱い人なんだろうか。私、絶対外野にしよ。って思ってたのに、やはり外野人口が高い。じゃんけん弱いのに、じゃんけんで公平に決めることに…。じゃんけんの神様!私に力を下さい!!



「……うわーいっ、負けた…内野だなんて…」



ついてない、ついてないよ!こうなったら早く(てゆうかわざと)ぶつかって外野になろう。マンサム先生の掛け声で始まったドッジボール。男女混合のせいで男子はやりにくそう。それを見ていたマンサム先生は「男子!気合いが足りんぞォッ!!わしが手本見せてやる!ばっはっは!」なんて笑いながら男子からボールをもぎ取った。「よぉぉぉぉっし!!行くぞ、お前らあああっ!」と叫んでおもいきりボールを投げた。そのものすごい勢いにみんな悲鳴を上げながらバラバラと散る。




「あああーっ!名無し危ないしっ!」

「……へ?」



私はというと、その時ちょうどふらり、と眩暈がして逃げることが出来なかった。つまり、だ。


バコーーンッ!!私の顔面にマンサム先生の力を吸収したボールがヒット。衝撃で私は言うまでもなく真っ白になる意識。周りは騒つき悲鳴が聞こえてきた。そこから、私の記憶がない。








「………ん、」



目を覚ますと閉められたカーテンと白い天井が視界に映る。あれ…私どうしたんだっけ?頭や頬にはタオルで包まれた氷があててあった。そっか、私顔面にボールぶつかって…まじで痛かったなあ…、




「あら、起きたの?」

「…あ、はい」

「今、氷変えてあげようと思ってたんだけど、痛みは大丈夫かしら?」

「…大丈夫、みたいです」

「あなた貧血起こして倒れたのよ。ちゃんと栄養とって睡眠とらなきゃだめよ」

「はい…すいません」

「6時間目始まったばかりなんだけど、どうする?着替えは短い黒髪の女の子が持ってきてくれてたけど、まだ休んでてもいいわよ」

「…じゃあ休んで行こうかなあ…」

「そうね、無理しないほうがいいわよ。あ、私ちょっと出てくるけど、大丈夫かしら?」

「あ、大丈夫です、寝てるだけだし…」

「じゃあちょっと出てくるわね、ちゃんと寝てるのよ」

「はい、ありがとうございます」



保健医が出ていった後に、私はジャージから制限に着替えて、即ベッドに横になった。すぐに眠くなってきてうとうと微睡んでいたらガチャリとドアの開く音がした。誰か来たみたい、まあいいや、構わずに寝てよ。そう思っていたら、シャッ!とカーテンの開く音が。え?思わず顔を上げてその音の方を見る。





「えっ?」


「何だよーここオイラのお気に入りのベッドなのに、先客いんじゃん……あ?」


なんだか何処かで聞いたことある声。よく見ると、この前私が顎にペットボトルをぶつけちゃった先輩……ま、待て待て待て!私この人にキレられてるんだ!ヤバイよ、顔隠さなきゃ!私は慌てて布団の中に潜る。


「あれ〜…お前どっかで見たことあんだよね〜」



そう呟いた先輩。静かになったから、出ていってくれるかな、なんて思ったのが甘かった。ベッドがギシギシ音を立てたと同時にズシッと重たい圧迫感。ひいっ!ま、まさか乗っかってる!?こ、これはピンチ!絶対布団を剥がれるわけにはいかない!




「なー、オイラお前の顔見たいんだけどー」



って言いながら、私が頭からすっぽりかぶっている布団をグイグイ引っ張ってくる。冷や汗だらっだらだよ!てゆうかこの人力強い!数分間の攻防戦のあと、ついに力尽きた私は、べりっと布団を取られた。




「っああ!!」

「おーい、お前往生際悪いぞー。枕で隠してまでオイラに見られたくないの?なんかショックなんだけど」


咄嗟に枕に顔を埋めたけどすぐに両肩を引っ張られて枕を取られた。そのまま身体を反転させられ、しっかりバッチリと目が合う。




「あーっ!お前っ、この前オイラをペットボトルで殴った女じゃん!」

「ぎゃああっ!ごっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!すいません、わざとじゃないです!」

「あれまじで痛かったんだけどー。つかムカついたし」

「ほっ、ほんとすいませんすいません!当てるつもりはさらさらなかったんです!!」

「ふーん…まあいいけどー」

「えっ?いいんですか?」

「うん、オイラ今すこぶる機嫌いいしね。あ、でもーオイラをペットボトルで殴った償いとして1つお前にあるわ」

「な、なんですか」

「オイラと友達になろーぜ!そしたらペットボトルで殴られたことチャラにしてやる!恨みっこなしな!」

「えっ?そんなことでいいんですか?」

「いいっつってんだろ。お前意外と可愛い顔してるし、必死すぎるところとか面白くて飽きなさそうだし」

「はあ、どうも?」

「名前なんてーの?」

「…えと」

「ああ、先にオイラから言うな!オイラ、セドル!2年5組な!お前は?」

「…1年の名無しです」

「名無し!よろしくな!これから遊んだりしよーな!」

「え、あ…はあ…」




ありったけの抵抗をするから



その後、携帯をセドル先輩に奪われた私は、勝手にアドレスと電話番号を盗まれた挙げ句、セドル先輩のアドレスと電話番号が電話帳に登録された。




(自分中心の弾丸トークについていけなくて丸め込まれた私)



TITLE:魔女のおはなし
 

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