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□赤い糸の行く先
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※会社パロ
※長文です
「妊娠!?マジで?」
「えへ、うん。できちゃった」
「ココ部長との子供なんだよね?いいなー」
紅茶を飲もうと給湯室に行くと、話があると同期の子が一緒についてくる。嬉しそうに報告されたのは、まさかの懐妊と結婚報告。
世界に各支店をもつ大手企業グルメコーポレーションに勤めて数年、同期の子ができちゃった結婚で寿退社するらしい。いいなあ、子供…私も欲しいなあ…羨ましい。幸せそうに笑う彼女を見て私も早く子供が欲しい、そう思い、未来の自分の姿を彼女に重ねてみた。てゆうかできちゃった結婚とか、案外ココ部長もやるよねー。
給湯室で紅茶にお湯を注ぎながら長話しをしていたら噂のココ部長が現れた。冷やかすように「部長もやりますね!おめでとうございます」と言うと、やはり社内の信頼度上位の部長は、彼女の肩を抱き「ありがとう」と言うのだった。うわー、目が痛い!これから社長のところに挨拶に行くそうだ。2人を見送り自分のデスクに戻ろうと給湯室をでる。瞬間、バシイッ!と、分厚い書類で頭を殴られる。
「あだっ!?」
「お前いつまで油売ってんの。ほんと使えねーな。お前なんて必要ねーよ、さっさと辞めてくれていいんだけど」
「うぐぅ〜…と、トミー部長、いつからそこにいたんですか?」
「馬鹿で使えねー部下がいつまでたっても書類取りに来ないからボクが直々にお前に持ってきてやったんだろ?もっと他に言うことはないわけ?」
「す、すいませんでした。わざわざトミー部長直々に書類もって来て頂き光栄です。手を煩わせるようなことして。そういうことなので私はこれで失礼します」
ペコリ、頭を下げる。私の属する部の部長はピンク頭に派手なスーツにネクタイってゆうぶっ飛んだ人。とんでもなく暴力的で不真面目。見た目は女性的なくせして優しさの欠片なんてとんでもない皆無。労いもない、鬼だ、鬼!でも実は、この鬼畜部長と私は付き合ってたりする。付き合いだしたのは去年。まあ99%強制の拒否権なし的な感じだったけど。さらに恋人も部下も扱いは変わらないけど。なんてことを思いながらデスクに戻り、さっき部長におもいっきり頭を叩かれた分厚い書類に目を通す。
「報告書にプレゼン、お前だけだからな、出てないの。ほんと使えねー。もし定時時間過ぎてみなよ」
「は、はい。死ぬ気で終わらせます」
「はは、無理だと思うけどー、まあ頑張ってね〜」
一睨みされたかと思ったら今度は小馬鹿にして高笑いしながら自分のデスクに戻っていった。ムカつく。まずはすぐに済む報告書からやってしまおう!うりゃああ!高速タイピング!!
「よしよし、私だってやればできるもんね!報告書終わり!あとは定時までにプレゼンを提出すればいいんだけ!」
「名無しさん、準備は出来ましたか?」
ユー先輩に声をかけられ思い出す。巡業のことをすっかり忘れてた!「外回り行ってきまーすっ」鞄と書類を持ち慌ててエレベーターに飛び乗る。トミー部長が嫌みったらしく「頑張ってねー、名無し?」と笑いながら言ったことは聞かなかったことにしよう。慌ててユー先輩の後についていく。
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「先輩お疲れさまです!私先に戻りますね」
「ああ、名無しさんプレゼン終わってないんでしたっけ?じゃあ、トミー部長に報告よろしくお願いしますね」
ユー先輩と別れ、グルメコーポレーションに戻る。トミー部長に戻ったことを告げて自分のデスクに戻る。もちろんお疲れさまなんて言葉はないけど。むしろ、「戻ってくんの早くない?ちゃんと仕事してきたのかよ」とか言われた。ムカついた私は「部長よりは真面目にしてます」と口を滑らせた、ら。もちろん仕事増やされたわけなんだけど。
「………鬼畜」
ピンク頭に聞こえないようにぼそりと呟き、キーボードを打つ。とりあえずプレゼンは終わりそう。
「部長ー…終わりました!はい!報告書とプレゼン」
「あ?なに、終わったの?お前が?」
「な!何ですかそれ!私だってやればできるんです」
報告書とプレゼンを受け取り目を通す部長。しばらくして「ふーん」と洩らす。何かミスがあった!?漢字間違いとか。それか、気に食わないことでもあったかのどっちか…。
「名無し、お前さあ」
「何かミスしてました!?」
「はあー?ミス?そんなのボクが知ったこっちゃないよ」
「それどうなんですか」
「ボクには関係ないことだからね。それよりも、お前さ、妊娠したいわけ?」
「………は?…ええ?」
「朝にココの部下と話してた時にお前羨ましがってただろ」
「あー、まあ。でも女なら誰だって結婚とか子供ができるのって憧れじゃないですか。そんなに深い意味はなかったんですけど…」
「なにそれ、名無し、お前ほんとムカつくなあ」
「いきなりなんですか!」
「お前が朝にあんなこと言うからボク、無駄に考えちゃったじゃん。名無しごときがボクを悩ませるなんて生意気なんだよ」
「トミー部長、なにか悩みあるんですか?私、聞きますよ!」
って、言ったらすごい目で見られた。まるでゴミみたいに。ひどい、彼女に向ける顔じゃない。はー、とため息をついたトミー部長は私の腕を引き、背後にあった壁へと押しつけた。
「えっ?ちょ、ちょっと部長!ここ会社!」
「お前が朝にあんまり羨ましそうな目であいつらみてたから、今日ボクずっと考えてたんだよ」
「いだだ!手首折れる!折れます!」
押さえつけられている手首はトミー部長が一言話す度にギリギリと力が増してものすんごく痛い。絶対これ指の跡残る。
「名無し、お前さー」
「な、なんですか」
「ボクとああなってみる気、ないわけ」
「……は?」
「何度も言わすな、馬鹿じゃねーのお前。ボクと結婚して子供つくる気はないのかって聞いてんの」
「……と、トミー部長、そそそ、それは…あの、えと…つまり、ぷぷぷ、プロポーズ…?」
「お前いい加減にしないと殺すよ」
「だ、だって!いきなりそんなこと言うから…私、パニック状態なんですけど…!」
「あーっ、まじでお前話しになんなくてムカつく」
「痛いっ!なんで叩くんですか!だって、だって!…って、え?ちょ、ちょっとどこ行くんですか!?」
手首を引っ張り、ついでに私の荷物も持ちエレベーターに乗り込むトミー部長。ちなみにものすんごく不機嫌で怖い。怒ってる理由は明らかなんだけど。ほんとはすっごく嬉しかったんだけど、だってまさかトミー部長から結婚なんて言葉、出るなんて信じられないし!ぐんぐん引き摺られトミー部長の派手な車に押し込まれる。ゴツ!おもいきり車の天井に頭を強打した。かなり痛い。
「もういいよ、お前馬鹿だから口で言っても伝わらないんだろ?なら先に既成事実作ったほうが早い」
「ものすごく伝わってますって!さっきはあまりにも急だったから…部長話しを聞いて下さいよー!…って、既成事実?」
「先にお前を妊娠させる」
「いやいやいや!それ犯罪っぽいからやめてえぇぇぇぇ!」
「あー、うるさい。静かにしてよ」
「じゃあ話聞いて下さいよ」
「…なに」
「私さっき、すっごく嬉しかったんです。だからトミー部長の子供だって欲しいし、結婚だってトミー部長とならいつだってしたいです」
「さっきはそんなこ言わなかったじゃん」
「だから、頭真っ白になってたんですって」
「なにそれ、そんなの理由になんねーから。早く言ってよね、そういうこと」
「…なんかすいません」
助手席でみたトミー部長は珍しく嬉しそうに笑っていて、つられて私も笑みがこぼれた。ツンデレだし、鬼畜だし、自分中心でいつも文句は尽きないけど、でも私は彼が好き。彼と一緒に過ごし、彼の子供と暮らす未来を、確かに重ね合わせて夢見てた。
「え、ちょっと待って下さい!何処むかってるんですか?」
「ボクの家に決まってるだろ。そのまま大人しく抱かれな」
「とっ、トミー部長!早い!切り替え早いですよ!」
赤い糸の行く先
ボクがお前を一生、手放すつもりなんてさらさらないに決まってるじゃん。
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はいー、お粗末様でした←なんだかトミーのキャラが…(^^)
Title:無気力少年。