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□太陽に抱かれて眠る火曜日
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「ええっ!?ボギーウッズと付き合うことになった!?」
「うん、多分そうなんだと思う。…屋上での話聞かれちゃって」
「多分て…本当に付き合ったの?…あの時いたの?」
「うん、いたんだって」
「で?脅されたんだ?」
「んー脅されたわけでもない、うん。なんかよくわかんない、絶対裏があると思うの」
昨日告白(っていうのかなあれ)されたけど、確かなのかいまいち分かんないし、てゆうか微妙に強制だったし。違う意味で目立つあの人が私の話を聞いてて今までまるで絡んだことないのにいきなり告白してくるとか…絶対絶対何か裏がある。
「名無しー、」
昼休み、ご飯を食べようとお弁当を準備していた私の元にタイミングよく現われたのはボギーウッズ。クラスがまた騒めきを失う。
「別にいいけど…」
「こいつ借りてくな」
友達に一言声をかけ開きかけたお弁当を包み直す私を待ってくれるボギーウッズ。昨日と違って全く苛々した感じがない。黙って後ろをついていく。向かっている先は昨日と同じ所だろう。立ち入り禁止になっている屋上。重い扉を開けると眩しい光が差し込む。
「ーわっ!?」
眩しさに目を細めてると入り口の段差に足を引っ掛けてバランスを崩し転びそうになる。瞬間、すぐに支えられた腰。
「危ねー…意外に鈍くせーのな」
「…あ、ありがとう……意外って何よ」
「見た目からだと、んなイメージないっつー意味だ」
「…なに、それ」
思わずムッとして顔をしかめる。そんな私の顔を見るなり、ぷっと吹き出すボギーウッズにますます私ははあ?と顔をしかめる。
「んな怒んなよ」
「別に怒ってない」
「そうかよ、まあ座れよ」
フェンスにもたれかかりながらボギーウッズは自分の隣を指差す。
「ねぇ、ボギーウッズ君はなんで私と付き合おうと思ったの?私のあんな話聞いてるにも関わらず」
「あ?なんでってか…まあ面白そうだなと思ってな。お前が言うバカな男共避けって思ってくれていいぜ?」
「…なんでわざわざボギーウッズ君がそんなこと?」
「別に何も企んじゃいねーよ、そんな警戒すんなって」
ガシガシと乱暴に頭を撫でてくる大きな手。全然嫌じゃなかった。むしろ警戒心が緩んだ。
「…別にしてない、し」
「なんだよ、飯食わねーならオレがもらうぞ」
「え?あーっ!!私のミートボール!」
「いつまでも食わねーからだ、早いもの勝ちだろ」
「最後に食べようと取っておいてたのに!」
「お前が太らねーようにオレが協力してやったんだろ?」
「何よ、さっきから失礼なことばっかり!」
「だから怒んなよ、怒りんぼか?」
「なっ、どーせ私は短気だし刺々してるし性格ブスですよ!」
キッ!と睨み付けると、笑いだすボギーウッズ。なに?なんで笑うわけ?
「あー、おもしれー。お前ほんと刺々しいよな」
「そんなこと分かってるし!」
「カルシウム不足なんじゃねーの」
「うるさいなあっ!余計なお世話………っんぐ?」
「これでも食ってカルシウム摂れよ」
口に無理やり突っ込まれた柔らかいものを反射的に噛ると口内いっぱいに広がるミルク味。
「……ん、ミルクパン…美味し」
「しっかり食っとけ」
「………ありがとう」
「何だ、笑えんじゃねーか」
「……はあ?」
「お前さっきから眉間に皺、全く笑わねーから笑い方知らねーのかと思ったぜ」
「むかつく…」
「だから睨むなって」
言ってボギーウッズ私の左右の頬をぎゅうう、とつねる。そしてそのまま無理やり笑わせられる形になる。
「ひょっと!らにすんら!」
「ぶ、ははは!この顔笑えんなー」
「なによ、もう!」
こんな風にすぐ、ありのままの自然な姿でいられたことなんて今までなかった。そう思ったら何故か笑みがこぼれそうになり、彼に見えないように慌ててうつむく。
太陽に抱かれて
眠る火曜日
この人なら、ありのままな私でいられるのかな。素直にそう思った。絶対言わないけど。
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