□好きな子は苛めぬきたい
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「いった!?痛いじゃないですか、トミー様!」

「はあー?お前に痛いとかってあんの?」



ボギー支部長に本部までまたお使いを頼まれた。ソーンウッドを抜け本部の重い扉を開きお使いを済ませたとこまではよかった。料理長の部屋から扉まで歩いていると背後から後頭部を思い切り殴られた。うわー何でいつも私が本部にくる時ってこの人がいるんだろう。目に痛いピンク頭に水玉模様の紫色の服。



「いやいやちょっと!痛いに決まってるじゃないですか!ひっど!」

「で?ゴミよりも弱いお前が何で本部にいるわけ?」

「つくづく失礼ですね、今日も失礼具合は絶好調じゃないですか」

「ああ、またボギーにお使い頼まれたってわけか」

「別に好きでお使いしてるわけじゃないですよ。いつも支部長がタイミングよく外せない仕込みに入るんですよねー、おかげで私は毎回パシリだし、何故か本部に来たらいつも蟲野郎に絡まれるしでいい迷惑ですよ、ほんと」




あはは、と笑いながら軽く言うとうっかり口を滑らせた。あ、やっば!蟲野郎とか言った?今、私やらかした!?




「名無し、」

「う、あ…と、トミー様何でしょうか」

「覚悟は出来てるよね」



にこ!不気味な満面の笑顔のトミー様にゾワァ、サーッと血の気が引いたのは言うまでもない。



「…と、トミー様、お、落ち着いて下さい!」

「ボクは落ち着いてるよ」

「う、あ…む、蟲は勘弁して下さい!蟲は勘弁…ってうぉあっ!!!」

「あはは、ほら早く逃げな、ヤラれちゃうよーボクにー」

「うえっ!?その漢字変換違くないですか!?殺る、でも困るけどヤるはもっと困る!」

「はー?なに、聞こえねー」



とかなんとか言いながら寄生昆虫攻撃を仕掛けてくるピンク頭もといトミー様。やっぱり怒らせた!ちょっ、まじ勘弁!し、死ぬ!死んでしまう!てゆうか私蟲嫌い!気持ち悪い!本当に苦手なんだってば!!この人それ知っててやってくるからほんと性格悪い。



「とっ、トミー様!ごめんなさーいっ!ほんとすみません、だから蟲はやめてえぇぇっ!」

「蟲じゃねーよ、ジョンガルクワガタ。ほら正しく言ってみな、じゃないと5支部に帰さないよ」

「何でもいいです!ひいいっ!まっ、じで、あっぶな!」



ブーン!と羽音がして私の横っ腹を擦める。あぶねー!



「あはは、足遅いよ名無し」

「え?ぎゃあああ!?トミー様はやっ!」



真後ろにいたトミー様に私はびっくりして飛び跳ねる。トミー様はそのまま流れるような動きで関節技を決めてくる。



「おっせ。まじ話しになんねー。名無しごときに寄生昆虫使うの勿体ないからボク直々に相手したげるよ」

「ぐぇ!い、いらないです!私ごときにトミー様直々に相手なんて手を煩わせるようなまね、しなくていいですから!」

「名無しに権限なんてないからね。つかお前なにちゃっかり指図してんの」
「し、してないです!」

「さっきボクのことなんて言ったか覚えてるよね」

「うん?なにそれ覚えてません」

「………」

「………」

「名無し」

「な、何ですか?私、もう帰りま…っていだだだだ!いひゃいぃぃぃ!」

「痛い?あーぶっさいくな顔。まじ笑える」



すっとぼけたらトミー様は左右に私の頬をぎぅゆううううっ!とおもいっきり引っ張る。千切れる!ほっぺた千切れるうぅぅ!!




「うっ…うっ…痛い…トミー様酷い…」

「はあ、お前泣いてんの?キモいからやめろよ」

「泣かせといてそれどうなんですか?」

「勝手に泣いたのお前。まあ、でもやり過ぎたからこれあげる」




はい、と乗せられたものは私の頭上で悪臭を放つあのゲロゾウムシ。ゾゾゾーッと全身の鳥肌が逆立ちフリーズ。これ、なんの嫌がらせ?人に渡すもんじゃなくない?てゆうか私蟲嫌いなんだってば!!明らかわかっててやってるよね!いやこういう人だってわかってるけど!




「あのすんません、トミー様これいらないです。返します」



固まった身体を奮い立たせぽい、とゲロゾウムシを棄てる。床の上に転がったゲロゾウムシを拾ったトミー様は三秒くらいの間のあとまた不気味に笑った。



「名無し、5支部まで送っていってあげるよ」

「え?」

「遠慮しなくていいよ、じゃあよーい、ドーン!!」

「うあああ!!いらない!送るとかいらないですっ!!」



ドーン!と言った瞬間、とんでもなく楽しそうな顔で走りだすトミー様。瞬間、私も走る。全速力で走りまくる。途中、盛大に転びトミー様に踏まれた。5支部までの帰路の間ずっとリバースした蟲攻撃やらトミー様直々の攻撃を食らいまくるのだった。逃げ切れるはずもなく途中で追い付かれもうボロボロ。5支部につく頃には虫による精神的ダメージ+トミー様からの一撃で意識を手放した。目が覚めたらベッドの上でトミー様はいなかった。変わりに枕元にジャムグラスホッパーが置いてあり、半泣きでぎゃああ!と叫んだのは言うまでもない。





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数時間前、本部から帰ってきた部下は気を失った状態でトミー様に担がれて帰ってきた。トミー様はすごく嬉しそうで名無しを部屋まで運んだ。「じゃあボク帰るねー。あ、ジャムグラスホッパー置いてくから起きたときの名無しの反応教えてよ、ボギー」と言って鼻歌混じりに本部へ帰っていった。蟲嫌いな名無しの部屋からは案の定絶叫が響く。



「し、支部長っ!助けて下さい!蟲!と、トミー様の蟲ぃぃ!」


「あー、まあ落ち着け。うるせーから」

「あれなんとかして下さい!てゆうか何でトミー様は私に対していつもああなんですか!支部長から一言言って下さいよ!」

「無理に決まってんだろーが。可哀想だが諦めろ」



分かりやすいくらいに凹む部下。トミー様はどうやらこいつに気があるらしい。そんなオレはトミー様に脅迫されてわざとこいつを本部に使いに出させてるんだが…。トミー様はオレがなんとか出来るはずもない。すまねえ、頑張れ。オレは部下の安全をただ祈るのみ。




好きな子は苛め
ぬきたい


(さーて、次はどうやって苛めてやろうかな)






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アイスヘル変のボギーとトミーの絡みからこの二人はよく一緒に仕事してそうだなーと思ったからのボギー部下に目付けてそうという妄想産物
 

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