□曖昧に始まる月曜日
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「俺、前から名無しちゃんのこといいなって思ってて、それで…もしよかったら俺と付き合って下さい!!」




朝、登校一発目から下駄箱の前で言われたのは、おはようといった挨拶ではなく、盛大なる告白だった。背後からいきなり名前をよばれ振り替える間もなく言われた言葉。そんな私の第一声もおはようではなく、




「あ、あの…気持ちはありがたいんだけど、ごめんなさい」








ほんと、男なんて鬱陶しい。バカばっか。人の気持ちも考えなければ空気も読めない。こんな公衆の面前で告られ断わる身にもなってほしいもんだよ。




「朝からほんとテンション下がった!大体、朝イチであんな人が多い中で告白ってほんとばっかじゃないの!もー疲れた!」

「そんなイライラすんなって、慣れてるでしょ」

「慣れるわけないでしょ!他人事だと思って!大体その朝のやつ名前も言わなかったし」

「あはは!緊張してたんじゃないの、あんたに告るんだもん。今月入って何人目?」

「…………5、6人だったかな?」

「ほんとモテるよねーあんた」

「好きでモテてるんじゃないし…」

「まっ、仕方ないよね名無し、あんた可愛いんだからさ」

「…可愛くないし、性格ブスだしどーせ」

「いやいや可愛いって」

「…どーせ第一印象ですか、どーせ見た目ですか…はぁ、みんな目、悪いよ」

「悪くない悪くない」





自慢じゃない。むしろこんな顔に生まれたことを何度後悔したことか。どこが可愛いのかこの私の顔の。中学生になってから私は告白されることが増えた。高校に入学してからもなんだかやたら騒がれたし、告白されることも増えていくし。1年のときなんて、何度、女の先輩にまで呼び出されたことか…そのたびに何度傷ついたことか…。



「うぅ…私、きっと素敵な恋愛出来ないと思う…。てゆうかもう彼氏なんていらない」

「いやいやまだ素敵な恋愛を語るには早いって」

「だって男が私の外見しか興味なくてアホばっかなら面倒だし。しかも気持ち悪い人もいるし…」

「まあ確かにあんたが今まで告られた話は面白いけどね」

「どこがよ」




はあ、ため息をひとつ。昼休みの終わりを告げる予鈴がなる。



「次の授業、なんだっけ?」

「…物理?」

「うわ、最悪」

「そういえば今日からボギーウッズが学校きてるらしいよ」

「ボギーウッズって…あの?」

「うん、停学期間終わったらしいよ」

「ふーん、何で停学になったの、ボギーウッズって」

「他校生と喧嘩して半殺しにしたとかって噂」

「へぇ…、その噂こわー」

「ねー、噂だけど」

「うん…って、屋上開いてたね、なんでだろ?」

「さあ?鍵でも壊れたんじゃん?」

「なるほど」




いつも開いていない屋上、もっと深く考えるべきだった。何で開いてるのか、誰かに聞かれてはいないか。普通に重い扉を閉めて授業にでて、帰る、だけだったのに。そう、いつも、は。





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授業なんて怠くて出てらんねぇ、そう思って、いつも鍵が閉まっていると思われている屋上へと向かう。鍵なんてとっくの昔にぶっ壊した。それから何度か直って新しいのになるたびに、セドルやバリー(ユーはいつも見てるだけ。ジェリーはバナナ食ってるだけ)とぶっ壊した結果、もう学校側も諦めたのか問題児で手が付けられないオレらが壊してるのを知ってか…直さなくなった。つまり、壊れっぱなしで出入り自由。まあ、一般の生徒はぶっ壊れてるなんて知らないだろうし、立ち入り禁止でずっと開かない屋上へ今さらわざわざ訪れる生徒もそうそういない。だからさぼるにはうってつけって場所だ。


それが今日は違った。ギィ…と重く渋い音をたてて開いた屋上の扉。その音で目が覚める。ちょうど昼休みになったからセドルやユーが来たのかと思っていたが、聞こえてきた声から違うことが分かり面倒だからそのまま居留守。で、その声の女は調子乗ってるやつだと思った。ちょっとモテる女、男を完璧なめてる奴。あんまりなめた発言も聞こえてくるからちょっと痛い目に合わしてやろう、そう頭に浮かんだのはすぐだった。




「はっ、いい神経した女じゃねーか、ああゆう調子乗ってる女…痛い目みせてやりたくなるよなァ」




その日の放課後、すぐに動くことを決めたのは言うまでもない。







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